スモールスタートで実績を出す
運用フローを最初に検討するうえで重要なことは、「どこまでの社員を巻き込んで開始するか」を設定することです。
私は、リファラル採用には全社員を巻き込むことを推奨しています。
しかし、新たな取り組みに対して全社員を巻き込むとなると、大企業になればなるほど担当者の負荷は大きくなるでしょう。
そんな時に重要なことは、いきなり全社展開をせずに、採用課題の大きそうな部門からスモールスタートをし、実績を出してからその後に全社展開をするという運用です。
実際に従業員数3万名規模の大手メーカー企業が、まずは数千名の事業部門から利用を開始し、社員からのQ&Aなどを踏まえて制度をブラッシュアップ、それから全社員を巻き込んで成功を収めた事例もあります。
スモールスタートで実績を出してから全社展開する取り組みは、制度をブラッシュアップするうえでも、経営陣を巻き込むうえでのエビデンスづくりの事前運用という観点でも有効です。
社員の「心理的負荷」と「業務としての負荷」を下げる
社員の視点に立てば、リファラル採用は主業務ではありません。いってしまえば任意のサブ業務であり、やらなくてもいいことです。そう考えると、社員に極力負荷のかからないフローを策定することが必要だということが見えてくるでしょう。
では、社員の負荷とは何かというと、大きく「心理的負荷」と「業務の工数としての負荷」の2つが挙げられます。
「心理的負荷」は、「友人を紹介したのに即NGだったら、友人との関係にヒビが入ってしまわないだろうか」といった不安です。こうした心理的負荷を軽減するには、「大切な社員の友人なのでいきなり書類選考で落とすようなことはせず、カジュアルに1度はお会いします」などの人事の意向を表明しておくことです。また、もし不合格だったとしても、何がミスマッチで採用を見送ったのか、その内容をしっかりとフィードバックします。
「業務の工数としての負荷」を軽減するための第一歩は、社員が自社の求人情報を認知しやすくしておくことでしょう。リファラル採用の情報が色々なところに散乱していたら、それを見るだけでも一苦労です。社内のポータルサイトにリファラル採用の専用ページを設けるなど、情報を一本化しておきましょう。
加えて、あまりに煩雑な手続きを求められると、「忙しいしやめておこうかな」と紹介する気持ちが萎えてしまいます。例えば、友人紹介推薦状を書いて、人事に共有をして、友人のメールアドレスを取得して…といった幾重にも手続きが必要になると、誰でも「面倒だな」と感じるものです。必要な管理はしつつも、どうすれば紹介者の手続き負荷を減らせるか、検討していくことが大切です。
「誰でもいいから紹介して」では誰も紹介してくれない
どのような人材を紹介してほしいのか、リファラル採用のターゲットとなるペルソナの解像度を高めていくことも重要です。「誰でもいいから紹介してほしい」では、安心して紹介することができません。
例えば、あなたが友人から、「困っているので誰でもいいから紹介してほしい」といわれてすぐに動けるでしょうか?
人間は誰しも「誰かの役に立ちたい」というホスピタリティを持っています。
実際に、リファラル採用で紹介する動機の上位は「友人の力になりたい」という理由であることは前述しました。紹介する社員側の立場に立てば、会社の役に立ちたいと同時に、友人の役にも立ちたいという気持ちを抱くはずです。
そんななか、友人の携わるミッションが不確定では安心して声掛けできません。
「営業のポストで人を探しています!」ではなく、「法人営業経験があり、商品に依存せずに企画提案ができるような人材を探しています」のほうが、業務内容やほしい人材像のイメージがつきます。「この友人にぴったりだ」とパッと聞いて浮かぶくらい、採用要件のペルソナの解像度を上げましょう。
鈴木 貴史
株式会社TalentX(旧株式会社MyRefer) 代表取締役CEO
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