(※写真はイメージです/PIXTA)

人材獲得競争時代に突入した今、企業は従来のように求人広告を出して待っているだけでは応募が来ず、戦略的に優秀層を獲得しにいくことが求められるようになりました。本稿では、鈴木貴史氏の著書『人材獲得競争時代の戦わない採用「リファラル採用」のすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、採用担当者自身がより高みを目指すうえで重要となる概念、「採用マーケター」について紹介します。

「採用マーケター」という新職種

読者の皆さまは、採用マーケターという言葉はご存じでしょうか? コロナの到来、DX化の推進、Z世代の社会進出などにより、日々難易度が高くなる採用市場において、従来のような「募集をかけて待つ」だけの採用から、「戦略的にタレントを獲得する」知恵が必要になってきていることはこれまで述べてきたとおりです。

 

そんななか、海外においては「採用マーケター」という職種がスポットライトを浴び始めています。

 

日本では、長らく新卒一括採用をベースとした人事システムを構築してきた影響で、人事は管理部門におかれ、コストセンターとして位置付けられてきた歴史があります。

 

そのため、リクルーティング業務も「人事・採用担当」という一括りの役割で組織されてきました。

 

読者の皆さまのなかに採用担当者がいる場合、求人のライティングやスカウト業務だけでなく、ブランディング、求人媒体の管理、エージェント管理、日程調整、面談、面接官トレーニングなど多様な業務を担っていることでしょう。

 

しかしながら、第四次産業革命が到来し、Z世代が社会進出し、事業構造や求められる職種、候補者の志向性が複雑化する昨今においては、各役割に、さらなる「専門性」が求められるようになってきています。

 

例えば、エンジニアと営業職では候補者の転職における志向性が全く異なるため、別々の採用戦略を打つ必要がありますし、母集団形成施策やブランディング、面接官トレーニングなどもより専門性が求められるようになっていきます。

海外では「採用活動の役割分担」はもはや常識

海外ではすでに採用活動の役割分担が起きています。

 

スカウトや候補者プールの運営をする役割は“ソーサー”、エージェント管理などをしながら応募以降の選考を捌き、採用に結び付ける役割は“リクルーター”、オペレーションの効率化や面接官トレーニングなどの役割は“リクルーティングコーディネーター”と呼ばれ、これらの上流でブランディング業務を担うのが“採用マーケター”と定義されています。

 

こうした構造は、営業職に置き換えるとわかりやすいかもしれません。

 

従来は、営業がテレアポから提案書作成、商談、クロージング、顧客サポートを全て一括で担っており、それを「営業職」と一括りで呼ばれていました。

 

近年ではインサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスなどに役割が細分化され、それぞれの専門性が高まっています。

 

このような、営業を分業して業務効率を高める組織構造は「THE MODEL」と呼ばれ、個人に依存しない再現性を見出すとともに、各職種の専門性を活かして組織全体の生産性を向上させています。

 

海外においては、この「THE MODEL」の組織トレンドが採用においても当たり前になっているのです。

 

特に転職の潜在層に働きかけ、候補者を増やす役割は重要視されており、採用マーケティングの専任担当である「採用マーケター」の重要性がますます高まっています。

Amazonが定義する、「採用マーケター」の3つの役割

採用マーケターは、採用の直接的責任を負わず、代わりに企業のブランドストーリーを伝えることで、採用担当者を補完する役割を担います。

 

具体的には、企業の採用ブランディング策定から採用サイトの管理・SNSや口コミサイト等に寄せられる企業の評判の管理などといったブランディング全般業務に加え、ターゲット候補者のペルソナ定義・採用チャネルの決定・広告費の最適化などの戦略全般、また、リファラル採用の促進・仕組み化や潜在層向けイベントの企画立案など、採用戦略における高度な判断が必要になる上流部分をメインミッションとします。

 

募集や選考などを担う採用担当者たちが、より迅速かつ簡単に仕事を遂行できるよう、質の高い応募者を創出することが主業務ですが、カバーする業務範囲は企業によって異なります。

 

例えば、GAFAの一角で有名なAmazonでは、採用マーケターの役割は①ローカル戦略、②チャネル戦略、③候補者体験の3つであると定義しています。

 

【①ローカル戦略】

マーケティングの知識を活用して、(国や地域の)ローカル市場に合わせたポジショニングを明確にした価値を提案する。

 

【②チャネル戦略】

データに基づき、各募集チャネルの有効性を評価し、ビジネス要件に基づき優先順位を立てる。目標を達成するうえでマーケティングノウハウを用いて最適な施策を考え、実行する。

 

【③候補者体験】

自らがエヴァンジェリスト(採用のトレンドやノウハウを社内に伝える存在)になり、その市場、職種におけるカスタマー・ジャーニーを考え、改善する。

 

これらに付随して、従業員を動機付けすることで、その先の潜在候補者にストーリーを届けるリファラル採用も、採用マーケターのメインミッションになります。ここまでの解説からでもわかるとおり、採用マーケターには高度なスキルが求められているのです。

 

 

鈴木 貴史

株式会社TalentX(旧株式会社MyRefer) 代表取締役CEO

 

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※本連載は、鈴木貴史氏の著書『人材獲得競争時代の戦わない採用「リファラル採用」のすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、再編集したものです。

人材獲得競争時代の戦わない採用「リファラル採用」のすべて

人材獲得競争時代の戦わない採用「リファラル採用」のすべて

鈴木 貴史

日本能率協会マネジメントセンター

時は大人材獲得競争時代。 経営者、人事担当者、現場の責任者など、採用に関わる人は日々熾烈な人材獲得合戦に巻き込まれています。競合他社と戦い、市場と戦い、時間と戦い、費用と戦い、従来の採用手法の延長に安息の地はあ…

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