代表的な各種商品小売業の特徴
各種商品小売業の代表は、百貨店と総合スーパーです。
両者とも一般消費者に対して、さまざまな商品を販売していますが、百貨店は定価で比較的高額商品を、多額の人件費をかけて丁寧な接客のビジネスモデルであるのに対して、総合スーパーは値引きをした商品を手間暇かけず売るビジネスモデルです。
百貨店では自社で在庫を持たない委託販売も多いことから棚卸資産の在庫回転率は思ったほど長くなりません。
総合スーパーは、薄利多売なので営業利益率が低い傾向にあります。
ただし、仕入れは掛取引で行うのに対して、売上は現金で入ってくるので、手元のキャッシュは潤沢となり、それを使って出店攻勢をかける業態(ドラックストアなど)もあります。
それらの業態は出店し続けて成長している間は安全ですが、成長が止まると急激に財務が悪化するという特徴があります。
小売業の事業性評価検証の事例が、2014年7月の「金融モニタリングレポート」にあります。
これは事業性評価の金融検査を行った初めての事例ですが、その内容は、
「事業の特性を考慮した戦略や融資の提案に課題のある事例として、スーパーなどの小売業は事業規模の拡大が収益率の向上に必ずしもつながらないという面があり、営業効率を踏まえない売上の追求や営業エリアの拡大よりも、各店舗の採算管理が重要である場合が多い。
しかし企業との間で、『店舗の収益管理や不採算店舗の分析』『新規出店の投資採算性の検証』等についてまでは議論するにいたっていない」
というものでした。
ここから小売業特有の見るべきポイントとして、「店舗別の収益管理」が重要であることがわかります。
店舗別の業績推移を調べ、不採算店舗はないか、あればどのような原因で不採算に陥っているのか、それを改善するにはどうしたらよいのかを経営者と議論できるかが重要となります。
また業績向上には、採算の取れている店舗の特徴を調査し、それを他の店舗にも応用していくなどの前向きな視点も必要となります。
次に、やはり小売業では、棚卸資産(在庫)が見るべきポイントとなります。決算書の金額だけでなく、事業の形態も考えてみましょう。
買取販売(利益率は高いが、その分リスクも多い)か、委託販売(利益率は低いが、その分リスクは少ない)かでその見方は違ってきますが、買取販売であれば在庫の鮮度と在庫の適正評価を重点的に見る必要があることがわかるでしょう。
また店舗を展開している小売業においては、差入保証金の資産性も確認する必要があります。
小売業の財務改善は、粗利率の改善や、人件費などの販売管理費を下げることですが、値上げをしても仕入れ値も上がっている、国の政策により人件費の上昇が求められている状況では、なかなか困難です。
店舗設備は銀行借入れでまかなう必要があるため、相応の借入金は計上されます。借入金の多寡は債務償還年数が10年以内になっているかがポイントです。
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