(※写真はイメージです/PIXTA)

金融機関は、融資をするか否かの判断において取引先企業をどのように査定しているのでしょうか。金融機関で数多くの企業の融資業務に携わった経験をもち現在は行政書士として活躍する黒木正人氏が、著書『企業の持続性を見極める 決算書の読み方と業種別のポイント』(ビジネス教育出版社)より、わかりやすく整理して解説します。

金融機関は取引先企業を「6つの債務者区分」に分類する

◆(1)債務者区分とは

債務者区分とは、金融機関が取引先の財務内容や信用リスクを考慮して、債務者を「正常先」「その他要注意先」「要管理先」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」という6つに分けた区分のことです。

 

「要管理先」は本来、「要注意先」に含まれますが、ここではわかりやすくするために独立させて、6つの債務者区分としています。

 

債務者区分は、実態的な財務内容、資金繰り、収益力等により、その返済能力を検討し、事業の継続性と収益性の見通し、キャッシュフローによる債務償還能力、経営計画等の妥当性、金融機関等の支援状況等を総合的に勘案し判断します。

 

特に、中小・零細企業等については、当該企業の財務状況のみならず、当該企業の技術力、販売力や成長性、代表者等の役員に対する報酬の支払状況、代表者等の収入状況や資産内容、保証状況と保証能力等を総合的に勘案し、当該企業の経営実態を踏まえて判断するものとなっており、これを「中小企業特性」といいます。

 

◆(2)具体的な債務者区分

「正常先」とは、業績が良好であり、かつ、財務内容にも特段の問題がないと認められる債務者をいいます。

 

「その他要注意先」とは、金利減免・棚上げを行っているなど貸出条件に問題のある債務者、元本返済若しくは利息支払いが事実上延滞しているなど履行状況に問題がある債務者のほか、業況が低調ないしは不安定な債務者又は財務内容に問題がある債務者など今後の管理に注意を要する債務者をいいます。

 

「要管理先」とは、金融検査マニュアル(廃止済み)では要注意先となる債務者については、「要管理先」である債務者とそれ以外の債務者(「その他要注意先」)とを分けて管理することが望ましいとされており、要注意先の中で特に注意を要する先、具体的には、3ヶ月以上延滞している先や条件変更で条件を緩和した先などが「要管理先」となります。

 

「破綻懸念先」とは、現状、経営破綻の状況にはないが、経営難の状態にあり、経営改善計画等の進捗状況が芳しくなく、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者(金融機関等の支援継続中の債務者を含む)をいいます。

 

「実質破綻先」とは、法的・形式的な経営破綻の事実は発生していないものの、深刻な経営難の状態にあって、再建の見通しがない状況にあると認められるなど実質的に経営破綻に陥っている債務者をいいます。

 

「破綻先」とは、法的・形式的な経営破綻の事実(破産、清算、会社整理、会社更生、民事再生、手形交換所の取引停止処分等の事由)が発生している債務者をいいます。

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企業の持続性を見極める 決算書の読み方と業種別のポイント

企業の持続性を見極める 決算書の読み方と業種別のポイント

黒木 正人

ビジネス教育出版社

会社の安全性・収益性・成長性を読み取り、課題を探す力が身につく書。融資力アップに役立つ主な業種ごとのトレーニング事例も収録。

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