卸売業の決算書の見方
卸売業は、日本標準産業分類では各種商品卸売業、繊維・衣服等卸売業、飲食料品卸売業、建築材料、鉱物・金属材料等卸売業、機械器具卸売業、その他の卸売業6業種(中分類)に分類されます。
その基本的なビジネスモデルは、商品の流通の過程で製造と小売をつなぐ経済活動を行うものです。その業種上の特徴は、「集荷分散」・「流通コスト削減」・「需給調整」の3つの機能があることです。
【卸売業の3つの機能】
・集荷分散機能:生産と消費の間に卸売業が介在することによって、場所・時間の距離を埋める機能。
・流通コスト削減機能:小売業者が多数のメーカーから直接仕入れるよりも、間に卸売業が介在することによって取引回数が減り、その結果流通コストが削減されるという機能。
・需給調整機能:卸売業が介在することによって生産と消費のギャップを調整する機能。
卸売業は、今や衰退産業と呼ばれています。
メーカーと一般商店をつなぐ古典的な卸売業の役割が縮小し、そこに小売側によるメーカー直接取引、大手小売店の価格決定権把握、コンビニなどチェーン店展開による一般小売店の減少、ネット販売や流通網が普及し消費者のモノの買い方の変化、長期にわたるデフレによる販売価格の低価格化など業界全体に逆風が吹いているのがその理由です。
では卸売業の決算書の特徴を見てみましょう([図表1])。
卸売業の貸借対照表の特徴は、製造のための機械や設備などが必要ないため、固定資産が少ない点にあります。
卸売業は衰退産業と言いましたが、業界の再編が進み、M&Aが行われやすい業種です。なぜなら幅広い商品を取り扱っている各種商品卸売業が新たな領域に進出する際には、中小規模の他社卸売業をM&Aをする方が効率的だからです。
資産の部の投資その他の資産が多額に計上されている場合は、M&Aで会社を大きくしている可能性があります。
負債の部では、卸売業の薄利多売というビジネスモデルのため、借入金などの負債が高くなりがちです。
そのため自己資本比率も低くなりがちです。卸売業は自己資本比率が低い会社と高い会社に分かれるといわれます。昔からの老舗企業は、過去からの利益の蓄積による自己資本が厚く自己資本比率が高い会社も存在します。
ですから決算書が第何期であるかを確認することも大切な視点です。
損益計算書の特徴としては、大量に同種類の商品を扱うことから、一般的に薄利多売となり、売上総利益率(売上高から売上原価を差し引いた売上総利益が、売上の何パーセントを占めるかを表した指標)が低くなる傾向があります。
ただし繊維・衣服等卸売業では、衣料品は粗利率の高い商品ということもあって、卸売業の中では売上総利益が高くなります。
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