企業の「安全性・成長性」がはっきりわかる!決算書の「5つの数値」の意味ととらえ方【元融資担当者が解説】

企業の「安全性・成長性」がはっきりわかる!決算書の「5つの数値」の意味ととらえ方【元融資担当者が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

決算書は、企業の経営状況を示すものであり、読みこなすことは企業経営者や投資家にとって必要不可欠です。金融機関で数多くの企業の融資業務に携わった経験をもち現在は行政書士として活躍する黒木正人氏が、著書『企業の持続性を見極める 決算書の読み方と業種別のポイント』(ビジネス教育出版社)より、決算書から企業の「安全性」「成長性」を見極めることができる5つの「比率」とそれぞれの読み方について解説します。

決算書から読み取れる情報

決算書からはさまざまなことが読み取れます。基本となるのは、貸借対照表からは「企業の安全性」、損益計算書からは「企業の成長性」が読み取れるということです。

貸借対照表の重要比率(安全性を見る)

◆(1)自己資本比率

自己資本比率は、総資本のうち「返済しなくてもいい資金」(自己資本)の比率です([図表1-1][図表1-2])。したがって比率が高い方が安全性に優れているといえます。一般企業の場合は、30%以上が安全の一つの目安となり、50%を超えると倒産しにくいといわれています。

 

[図表1-1]自己資本比率の計算式

 

[図表1-2]自己資本比率のイメージ

 

◆(2)流動比率・当座比率

流動比率([図表2-1])と当座比率([図表2-2])は、しっかりと支払いができるキャッシュがあるかという「手元流動性」を表す指標です。

 

[図表2-1]流動比率の計算式

 

[図表2-2]当座比率の計算式

 

[図表2-1][図表2-2]の計算式において、用語の意味は以下の通りです。

 

・流動資産:短い期間(基本的に1年以内)に現金化ができる資産

・当座資産:流動資産のうち換金性が高い「現金・預金」「受取手形」「売掛金」「有価証券」の合計

・流動負債:1年以内に返済しなければならない負債

 

流動比率は150%、当座比率は100%以上あるのが望ましいといわれ、それぞれ100%、80%を切るようになると資金繰りが厳しくなります([図表2-3][図表2-4])。

 

企業はいくら利益が出ていても、資金繰りに詰まれば倒産します。その意味で流動比率と当座比率は、非常に重要な指標です。

 

コロナ禍では、当座比率は100%では不十分で、最低限150%、目指すは300%といわれています([図表2-4])。

 

[図表2-3]流動比率のイメージ

 

[図表2-4]当座比率のイメージ

 

◆(3)固定比率・固定長期適合率

企業の安全性を見るうえでは、長期的な支払能力を見ることも重要です。

 

固定比率([図表3-1])と固定長期適合率([図表3-2])は、土地・建物などすぐにキャッシュにならない資産が、どれだけ返済しないでよい資金(自己資本)、もしくは長期で返済すればよい資金(固定負債)で賄われているかを示す指標です。

 

[図表3-1]固定比率の計算式

 

[図表3-2]固定長期適合率の計算式

 

[図表3-1][図表3-2]の計算式において、用語の意味は以下の通りです。

 

・固定資産:現金化をするのに1年を超える期間がかかる資産と会社が長期間保有する資産

・固定負債:返済に1年を超えてもよい負債

 

固定比率、固定長期適合率はいずれも100%を切るのが望ましいです([図表3-3][図表3-4])。

 

[図表3-3]固定比率のイメージ

 

[図表3-4]固定長期適合率のイメージ

 

もし固定資産を自己資本で賄えなかった場合には、賄えなかった残額につきできる限り長期で返済する資金で賄いたいと考えます。

 

固定長期適合率が100%を超えている場合は、長期にわたって使う資産の一部を、短期資金で賄っているので、資金繰りが破綻する可能性があります([図表3-4])。

 

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企業の持続性を見極める 決算書の読み方と業種別のポイント

企業の持続性を見極める 決算書の読み方と業種別のポイント

黒木 正人

ビジネス教育出版社

会社の安全性・収益性・成長性を読み取り、課題を探す力が身につく書。融資力アップに役立つ主な業種ごとのトレーニング事例も収録。

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