(※写真はイメージです/PIXTA)

かつての地位の高さや特別なキャリアそのままに、「どこでも特権」を振りかざし、周りの人に対してとにかく横柄に振る舞う高齢者が意外に多いといいます。です。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『70歳からの老けない生き方』(リベラル社)で解説します。

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「枯れ老人」はタンパク質摂取と日光浴を

「男の更年期」

 

近年、この言葉を目にする機会が増えました。「更年期」と言えば、もともともっぱら中高年期の女性の肉体的変化のついて語るときに使われてきた言葉です。

 

前述のように私自身は、旧来、更年期と呼ばれていた時期のことを「思秋期」と呼ぶことにしています。

 

中高年期以降、性別を問わず、人間のホルモンバランスは大きく変わっていきます。別の項でも述べていますが、男性は男性ホルモンが減少し、女性は女性ホルモンが減少します。この時期を一般的には更年期と呼ぶわけですが、特に女性の場合はこの時期に生理が終わり、「更年期障害」と呼ばれる自律神経症状を呈する人が多くなります。

 

生理が終わるというはっきりとした変化があるために、思秋期における問題は女性特有のものと考えられがちですが、男性にもさまざまな変化が生じます。

 

実際のところ、この変化を「仕方のないこと」とあきらめてしまう人が多いのですが、この本の主たるテーマの一つであるアンチエイジングの観点から考えると、それは大きな問題です。

 

思秋期においては、自分の性のホルモンが減少するためにいくつかの症状が現れます。

 

●肌つやが悪くなる
●性欲が衰える
●男性は勃起不全が生じる
●女性は骨粗しょう症になりやすくなる

 

また、特に男性の場合は闘争本能のようなものが衰えるだけでなく、社交性が失われることになります。また、男性ホルモンの減少は、知的機能、特に記憶力の衰えという症状を生じさせます。ただし、この社交性について言えば、男性ホルモンが大きく関係しており、女性の場合、男性ホルモンが増えるために、思秋期の終わりがけにおいて社交性が増すということがわかってきています。

 

そのことは、たとえば昼間の都市部のレストランなどでの風景に現れています。

 

楽しそうに会話している中高年女性のグループはよく見かけますが、男性のグループはほとんどいません。また、コロナ禍で機会は減りましたが、平日の格安バスツアーの利用者のほとんどは女性ですし、観光地のお土産店、道の駅などで楽しそうにしている70代、80代の数は圧倒的に女性が多い。これも中高年期の男性ホルモン事情の性差の表れと言っていいでしょう。

 

もちろん、いわゆる更年期障害に苦しむ女性も少なくないのも事実ですが、それが終わった後、特に70代以降の楽しみ方のスキルは、男性に比べて女性のほうが一枚も二枚も上なのかもしれません。

 

じつは、思秋期に変化が現れるのは性ホルモンだけではありません。脳内環境の変化という大きな問題があります。

 

この時期、脳内の前頭葉が縮み始め、次のような変化が現れます。

 

●意欲や創造性が衰える
●感情のコントロール力が衰える
●セロトニンなどの神経伝達物質の減少を招き、うつ病のリスクが増す

 

これらはまさに「枯れ老人」の症状そのものです。もし70代、80代を充実させ、上機嫌で過ごしたいと願うなら、なんらかの対策を考えなければなりません。

 

その対策として、近年「ホルモン補充療法」が注目されていますが、それ以前に日常においても心がけるべきことがあります。

 

まずは肉類などの動物性タンパク質の摂取を踏まえたバランスのいい食生活を心がけることです。また、意識的に性生活を活発化することも有効です。

 

さらに、毎日、日光に当たること。

 

日光に当たることは神経伝達物質の分泌を促します。1時間、2時間といった長時間の日光浴は必要ありません。散歩しながら15分から30分程度、日光を浴びるだけでもいいのです。自宅のベランダ、あるいは窓越しであっても効果はあります。

 

これまでそうした習慣のなかった70代、80代であっても、すぐに始めてみてはいかがでしょうか。なによりも、ルーティンとして地道に続けるには意志の強さも必要です。こうしたことで、老化を遅らせ、自分の性を維持できるのです。

 

そして、男性ホルモンを増やすには運動も必要です。

 

冒頭で紹介した「大丈夫で安心した」作家の日常生活がどうであるかは知る由もありませんが、さまざまな努力の賜物であることは間違いありません。80代、90代でも精力的に活躍する姿を見られるものと確信しています。

 

和田 秀樹
ルネクリニック東京院 院長

 

 

※本連載は和田秀樹氏の著書『「65歳の壁」を乗り越える最高の時間の使い方』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、再編集したものです。

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