(※写真はイメージです/PIXTA)

誰もがいつかは高齢者になります。高齢者制度を非難して、高齢者福祉を貧しくしていくことは、自分が高齢者になったときに困るでしょう。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『80歳の超え方 老いは怖くないが、面倒くさい』(廣済堂出版)で解説します。

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最後まで老醜をさらしても生きるべき

■死ぬまでの時間は、楽しいことを優先させよう

 

上手に老いていくのは難しいものです。

 

人間は見栄っ張りだから、人からみじめな老い方をしていると思われたくありません。それで虚勢をはって偉ぶったり、「まだまだ大丈夫」と言ってみたりしますが、若い人から見たら十分にヨボヨボ老人になっていくのです。

 

私も還暦を過ぎました。あと10年は突っ走るつもりですが、70歳になれば、いちばんしたい仕事に絞って上手にやっていきたいと思っています。

 

たぶん、年をとったら全部を持ち続けるのはあきらめないといけないのでしょう。なぜなら、大荷物では長くは歩けないからです。老いるごとに自分の荷物は減らし、人に預けて、人生を楽しみ続けたいというのが私の願いです。

 

「尊厳死」というものがあります。尊厳のある死、よけいな延命措置をしないで自分の死は自分で決めることです。

 

自分がわけわからなくなる前に安楽死させてほしいという希望もあります。ただ、私は安楽死には賛成しません。人間はジタバタ最後まで老醜をさらしても生きるべきだと思っています。

 

尊厳とはなんでしょうか。寿命を静かに受け取ることが人間の尊厳ではないのかと思います。安楽死というのは、自分が神となって寿命を決めるということです。そういう意味で、安楽死は人間の傲慢が潜んでいるように感じます。

 

私としては、「延命治療はしないでほしい」と近親者にお願いしておけばいいのではないかと考えます。希望は延命措置はしなくていい、理由は痛い思いはしたくない、です。

 

安楽死を希望して、殺されるそのときに「生きたい」と思うかもしれません。本当に私たちは確信を持って死を決断できるのでしょうか。自殺される方もいますが、そういう方もうまくいけば生きたかったのだと思います。寄り添う人や助けがあったら、死を選ばなかったかもしれません。

 

現時点で安楽死を望まれる方は、困っている方ではなく、自立して自信がある方でしょう。みっともない姿を見せたくないのかもしれません。家族に迷惑をかけたくないのかもしれません。

 

でも、死ぬその瞬間まで、もしかしたら陽ざしの暖かさに感動するかもしれませんし、末期の水が美味しいと思うかもしれません。死は未知なものです。できたら、寿命はみなさんがまっとうしてほしいと思います。

 

70代になったら、若さをあきらめる代わりに手に入るものもあるはずです。

 

それが何かは人それぞれちがいますし、これが正しい生き方だと私も威張って言えるものはありません。私は医者ですから、病気の予防のことを書いてほしいという要請が多いのですが、予防をいくらしてもがんになったりもします。もちろん、医者だって病気になります。

 

ですから、死ぬまで楽しく生きてやるという思いで、年をとっていきたいと思います。

 

和田 秀樹
和田秀樹こころと体のクリニック 院長

 

 

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