(※写真はイメージです/PIXTA)

社内DXによって業務効率化を期待しても「思うようにいかない」というケースは少なくありません。一体なにが原因なのでしょうか? 不動産販売事業を経営する中西聖氏が、自社のDX推進プロジェクトの体験をもとに解説します。

なぜDXの効果が出なかったのか?

(※画像はイメージです/PIXTA)
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効果が出ない原因はなんなのか。もしかしたら現場のヒアリングに問題があるのかもしれない。僕は直感的にそう思った。

 

広く要望を聞くのはよいのだが、実現が難しい要望や効果が薄いアイデアも増える。現場から玉石混交の意見が集まり、その効果を正確に試算することよりも要件定義と開発に駒を進めることが仕事になっているのではないかと思っていたのだ。

 

では、解決策は何か。効果を試算する能力を高めてもらうことしか思いつかない。そこで、彼らには現場の実態に即した形で、現場業務の基本的なことを学んでもらいたいと伝えた。

 

例えば、現場が「この業務がなくなれば3時間短縮できる」という場合、この「3時間短縮」という効果の根拠は現場社員の意見である。感覚的な意見といってもいいかもしれない。

 

彼らがいう3時間は、実際には2時間かもしれない。新人は3時間掛かり、ベテランは2時間でできるといった差もあるだろうし、そもそも何時間掛かるか計っていない場合もある。書類の入力作業に1日どれくらい使っているか、と聞かれて、正確に答えられる社員はほとんどいないだろう。

 

DXの効果を高めていくためには、このあいまいさを解消しなければならない。現場とDXチームの間で業務の時間や負担を測る物差しを同じにする必要があるのだ。

 

突き詰めていうなら、現場の声に「騙されないようにする」ということだ。騙すといっても、現場は騙しているつもりはなく悪気もない。現場の要望を一つずつ聞き入れていると、開発の負担が膨らむ。予算や時間も掛かり、効果が薄いシステムを入れてしまうことにもつながる。

 

それを防ぐには、現場を学び、物差しを合わせるしかない。それが結果としてヒアリング力を高めることにつながり、DX効果の真実に近づき、優先順位も見えやすくなるのだ。

 

また、効果を検証するためには、効果を数値化し、改善策を考えるPDCAが重要になる。僕らはのちにPDCAの回し方が不十分だったことに気づく。PDCAのC(check)とA(action)を強化することによって効果の定量的な仮説設定力が大幅に上がるのだ。その成果にたどり着く道のりも、第一歩は物差しを合わせることだった。

 

 

中西 聖

プロパティエージェント株式会社

代表

 

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※本連載は、中西聖氏の書籍『DX戦記 ゼロから挑んだ デジタル経営改革ストーリー』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集したものです。

DX戦記 ゼロから挑んだデジタル経営改革ストーリー

DX戦記 ゼロから挑んだデジタル経営改革ストーリー

中西 聖

幻冬舎メディアコンサルティング

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