(※写真はイメージです/PIXTA)

社内DXによって業務効率化を期待しても「思うようにいかない」というケースは少なくありません。一体なにが原因なのでしょうか? 不動産販売事業を経営する中西聖氏が、自社のDX推進プロジェクトの体験をもとに解説します。

計算上の効果と「ずれ」が生じる

(※画像はイメージです/PIXTA)
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その後もいくつかの機能を実装したが、なかなか効果を生まないケースが多々あった。ここにも大きな落とし穴がある。

 

DXチームの提案内容を見ると、導入効果の見通しが書かれている。資料には時間や工数の削減が明確に示され、添付のグラフはどれも右肩下がりだ。ツールの導入によって業務に掛かる時間、コスト、工数が減っていくことをきれいに表している。

 

彼らは彼らなりに現場にヒアリングし、現場の社員とコミュニケーションを取って資料を作っている。資料に示されている根拠は、それなりに説得力がある数字であると分かっている。しかし、どうも信じられない。どこが、とはいえないのだが、DXチームから提出される資料が、売り文句ばかりを並べた業者のパンフレットのように見える。

 

実際、実装したアプリケーションについて現場の社員に評価や反応を聞いてみると、「いまいち」「あまり使っていない」といった声が返ってくることもあった。ほかのアプリケーションについても、現場が期待し、見積もったような効果は出ていない。

 

一例として、バックオフィス向けに導入したアプリケーションは、申請書の作成の一部を自動化することによって1日1時間くらいの時間が省けるという提案だった。これは大きい効果だ。僕はさっそく実装を支持した。

 

しかし、実際に稼働させてみると、書類作成の7割は自動化したが、残りの3割は手作業として残った。自動入力された部分が合っているかどうか確認する作業が増えて、結局のところ、作業時間は導入前とほとんど変わらなかった。

 

1時間削減になるという数字はなんだったのか。提案資料に書かれた定量的な効果は実装後にはほとんど無視され、提案を通すための宣伝文句程度の意味しかもっていないのが現実だった。

 

現場とDX推進チームによるそれぞれの思い込み

さらに問題だったのは、実装済みのアプリケーションについては特に振り返りは行われず、毎週の定例ミーティングではDXチームから次の実装に向けた新たな提案が出てくることだった。

 

「このツールは効果が薄かったので、その代わりとして、次はこのツールを入れようと思います」

 

「次はこのシステムを入れてみたい」

 

そんな具合に、新たなDXの計画が着々と出来上がり、予算が積み重なった。現場はDXチームのヒアリングに答えることで、DXが自分たちの業務をラクにしてくれると盲信している。一方のDXチームは現場のヒアリングを踏まえた要件定義が負担や工数の削減につながると盲信している。

 

ここに重大なギャップがあった。その結果、効果を生まない機能が増えて、低効果、高コストの状況を生み出していたのだ。

 

そのような状態が続き、僕はDXチームの提案内容に疑問をもつようになっていった。

 

「4時間短縮になる」「1人分の工数が減る」といった資料の内容がすべて机上の数字に過ぎないと思うようになり、本当に「4時間短縮になる」のか、「1人分の工数が減る」のか、効果の確度はどれくらいで、根拠はなんなのかといった点を再度検証してもらう指示を出すことも増えていった。

 

DXチームにとっては面白くない。ツールを実装して効果を出すことが仕事であるにもかかわらず、資料作りばかりやらされる。「DXを急ごう」とハッパをかけられる一方で、効果の再検証で時間を取られる。お互いに声には出さない不満が膨らみ、僕とDXチームの関係性にも悪影響を与えるようになっていったのだった。

 

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※本連載は、中西聖氏の書籍『DX戦記 ゼロから挑んだ デジタル経営改革ストーリー』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集したものです。

DX戦記 ゼロから挑んだデジタル経営改革ストーリー

DX戦記 ゼロから挑んだデジタル経営改革ストーリー

中西 聖

幻冬舎メディアコンサルティング

紙ありき、無駄な残業、膨れ上がる営業コスト…… 非効率極まりないアナログだらけの日常から脱却せよ! 課題山積の不動産会社はいかにして 「不動産×IT」のハイブリッド企業に進化したのか? 「失敗することでしか前…

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