国内にも世界にも数多くある「同族企業」
世界を見渡せば、有名企業の中にも同族企業が数多く存在します。[図表]を見て、「えっ、あの企業も同族経営なの⁉」と驚かれるかもしれません。
日本の上場企業は、ファミリービジネス(同族経営)が53%、単独経営が10%、一般企業が37%という構成で成り立っています。同族企業は、もしかすると私たちがイメージするよりもはるかに多く存在し、経済の中心を担っているともいえますね。
同族企業が多いというのはなにも日本に限った話ではなく、実は「S&P500」にランキングされる企業のうち、3分の1が同族企業といわれています。
従来の経営学では、「同族経営=古い統治体制」と見なされていました。現に同族経営は、アメリカの学説で「富の独占」「お家騒動」「能力不足の息子の世襲」などのリスクが指摘されており、「企業は成長する過程で、所有と経営の分離を進めるべき」という考えが主流だったのです。
しかし最近の研究では、同族経営に対してポジティブな評価も出ています。ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院のジャスティン・クレイグ客員教授は、S&P500のようなアメリカを代表する企業に対し、「同族企業は、非同族企業の業績を上回る」という見解を発表しました。
他の多くの研究者も、ROE(自己資本利益率)や利益の伸び率といった項目で同族企業の優位性を見出しており、欧州でも同様の結果が出ています。
同族企業のメリットと「リスク」
同族企業のメリットとしては、次の4つが挙げられます。
②「もの言う株主」となって、経営の暴走を抑えることができる
③目先の利益よりも、長期的な繁栄を目指し、結果としてブレのないビジョンや戦略を取りやすい
④創業家が持ち得る人脈や名声が、経営に貢献できる
筆者自身、公認会計士・税理士として同族企業の税務顧問やコンサルティングを行うなかで、同族企業の強みを痛感しています。事業承継においても、同族(親子)だからこそスムーズに承継できた例は珍しくありません。
同族経営の場合、お子さんである後継者は、小さいときから経営者としての親の背中を見て育ってきています。そのため、経営の細かい内実はわからないにせよ、従業員や取引先を大切にする気持ちや、経営者としての責任感などを体感として学び、持ち合わせているものです。
ところが中小企業や零細企業の場合、「家族だから」という盲目的な信頼によって、経営能力がない我が子を後継者に据え、失敗してしまう例が非常に多いのです。
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