後継者難のなか、「M&A」を選ぶ企業が増えている
中小企業の「後継者不在」が社会問題化するなかで、近年はM&Aを選択する企業も増えています。中小企業庁が公表した「事業承継に関する現状と課題について」(2016年)によると、事業承継・引継ぎ支援センターで請け負った案件数は、右肩上がりで増加しています。このデータは2015年までなので、現在の件数はもっと多い可能性が高いといえます。
さらに注目すべきは、事業承継の相談案件のうちM&Aが約70%と非常に高い割合だということです。
事業承継・引継ぎ支援センターが請け負った事業承継で、企業の従業員数に目を向けてみると、「1〜5名以下」が半数弱、「6〜10名以下」「11〜20名以下」と続きますが、従業員数が少ない小規模の中小・零細企業がこの事業承継・引継ぎ支援センターを活用していることがわかります。
この調査元である事業承継・引継ぎ支援センターに限らず、M&Aをマッチングする仲介会社は年々増加しており、日本政策金融公庫が取り組んでいる「事業承継マッチング支援」など無料のマッチングサービスも増えました。中小企業の場合は、同業者の社長や金融機関の紹介でマッチングするケースも見られます。
M&A後、後継者に向けられる「厳しい目」
M&Aを行うと、買い手企業から新しい経営者が来るわけですが、従業員からは厳しい目を向けられることが大半です。後継者の能力はもちろん必須ですが、なおかつその会社の文化への理解が深くなければ、従業員との溝は埋まりません。
承継して「1年以内に、自分がこの会社を変えてやろう」と改革を強く押し進めようとしても、まずうまくはいきません。変革が必要であっても、3年程度は期間を必要とします。
ビジネス書やウェブメディアなどでは「敏腕経営者がM&A後に大胆な改革をした」という文脈でしばしば語られますが、その内実は「既存社員を辞めさせた」という強引な手法であることが多く、これは事業承継のあるべき姿ではないと私は考えています。
経営者が代わって自然と辞めていくならまだしも、後継者が力を振りかざして辞めさせるというのは、決して良い会社とは思えません。短期的には成功したように見えても、長い目で見た場合、経営は行き詰まることになります。
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