(※写真はイメージです/PIXTA)

日本の約6割の企業では後継者が不在です。多くの経営者が後継者問題に頭を抱えるなか、自分の会社には後継者候補がいるから大丈夫、と油断していると思わぬ憂き目にあうことも……。本記事では、事業承継に詳しい税理士・公認会計士の小形剛央氏が、創業40年のスーパーの事例とともに、先代経営者が事業承継に向けて準備すべきことを解説します。

深刻な「後継者難」の日本

いまや、中小企業の後継者不足が深刻な社会問題となっています。帝国データバンクの「全国企業『後継者不在率』動向調査」によると、2020年までの企業の後継者不在率は、65%程度で推移しています[図表]。

 

出所:帝国データバンク「全国企業『後継者不在率』動向調査(2021年)」をもとに作成
[図表]後継者の不在率動向は? 出所:帝国データバンク「全国企業『後継者不在率』動向調査(2021年)」をもとに作成

 

ただし、2021年は61.5%で、これは調査を開始した2011年以降で最低の数字となりました。これには次の3つの理由が想定されます。

 

1.新型コロナウイルス感染症による事業環境の変化などで、高齢者の経営意欲が低下し、後継者決定の動きが強まったこと


2.「事業承継税制」の活用が推進されたこと

 

3.中小企業の経営資源の引き継ぎを後押しする「事業承継補助金」の運用や経営・幹部人材の派遣、M&Aマッチング支援など、円滑な事業承継に向けたサポートが加速したこと

 

同じ調査によると、2021年の事業承継に占める「同族承継(親族内承継)」の割合は38.3%でした。全項目中最も高い数字となっていますが、2017年からは3.3ポイントの低下となっていることから、親族内承継の割合は縮小傾向にあることがわかります。

 

それに代わって存在感を発揮しているのが、血縁関係によらない役員などを登用した「内部昇格」で、2021年では31.7%を占めている状況です。

 

いずれにせよ、企業の約60%が後継者不在という状況では、「具体的な後継者候補はいないが、事業を継続していきたい」と考える経営者は、早い段階から後継者のリストアップや募集を始めなければなりません。たとえ後継者候補がいる場合でも、油断は禁物です。会社に十分な魅力がなければ、承継前に会社を去ってしまうという恐れもあるからです。

頼みの綱であった息子に、承継を拒否されてしまった!

属性:小売業(店舗販売)
売上:約10億円
先代経営者:70歳
後継者:未定

 

この企業は創業して40年近く、地域密着型のスーパーを複数店舗構えていました。創業からの年数が長く優良企業に見えますが、会社の現況は問題だらけでした。店舗の建物や内装はボロボロで、仕入れや販売方法も昔の方法を採用したままで改善意欲も特になく、借金も多く、経営状況は良いとはとてもいえない状況でした。

 

先代経営者は息子さんを後継者候補としていたのですが、その思惑として「息子ならなんとかしてくれるだろう」という安易な気持ちがあったようです。「早く承継して手を引きたい」という思いも見え隠れしていて、会社としての魅力が乏しいことに気づいた息子さんは、事業承継を辞退することを父親である先代経営者に伝えました。

 

そこで先代経営者は廃業を考えたのですが、借金もあるために簡単にはやめられない状態で、結局現在も事業を続けています。

 

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次ページ先代経営者が事業承継に向けて準備すべきこととは?

※本連載は、小形剛央氏の著書『いきなり事業承継成功読本』(日刊現代、講談社)より一部を抜粋・再編集したものです。

いきなり事業承継成功読本

いきなり事業承継成功読本

小形 剛央

日刊現代

経営者にとって「最後の大仕事」である事業承継。しかし、「後継者が見つからない」という理由で廃業を選択するケースも増えており、無事に承継できたとしても、承継後すぐに経営が立ち行かなくなってしまう「失敗例」も多い。…

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