(※写真はイメージです/PIXTA)

苦労して起業しても、社長の約半数は年収360万円程度と、日本人の平均年収よりも稼げません。そのようななか、社長になるのには、起業よりも成功しやすい手段があると、相続に詳しい税理士・公認会計士の小形剛央氏はいいます。どのような手段でしょうか? みていきます。

事業承継は「ゼロから起業する」よりもリスクが低い

これは後継者目線でのメリットです。事業承継をすることで、後継者はゼロから会社を立ち上げる必要がなくなり、既存の事業を引き継いでスムーズに社長となることができます。

 

一国一城の主になることを目指す後継者にとっては、すでに事業や器が準備されているということは、事業をゼロから起こすよりもリスクがはるかに低く、大きな利点となるのです。

 

起業に関心がある人でも、実際に起業するまでにはさまざまな関門があります。日本政策金融公庫の「起業と起業意識に関する調査」(2017年)によれば、起業関心層に対してまだ起業していない理由を尋ねたところ、1位から順に「自己資金が不足している」(58.6%)、「失敗したときのリスクが大きい」(37.5%)、「ビジネスのアイデアが思いつかない」(34.6%)となりました[図表1]。

 

出所:日本政策金融公庫総合研究所「起業と起業意識に関する調査」(2017年)をもとに作成
[図表1]起業関心層が起業していない理由は? 出所:日本政策金融公庫総合研究所「起業と起業意識に関する調査」(2017年)をもとに作成

 

リスクをとって起業し、社長になっても…4割は「年収360万円」の実情

読者のみなさんも、かつてはこうした悩みを抱いた経験をお持ちかもしれませんが、起業してからもさまざまな問題が起こります。

 

別の調査によれば、起業した人の月商(1カ月あたりの売上高)は、「30万円未満」が42.1%、「30万円以上50万円未満」が14.7%と、決して裕福とはいえない実情です[図表2]。

 

出所:日本政策金融公庫総合研究所「起業と起業意識に関する調査」(2017年)をもとに作成
[図表2]1ヵ月あたりの売上高は? 出所:日本政策金融公庫総合研究所「起業と起業意識に関する調査」(2017年)をもとに作成

 

月30万円ということは、年収にすれば360万円ほどですが、経費を考えたら毎月の手取りは20万円代といったところです。

 

国税庁や厚生労働省の調べでは、日本人の平均年収は約433万円、年収の中央値は約399万円ですから、起業して社長となっても、その半数近くが一般人の平均年収よりも稼げていないというのは、非常に厳しい現実です。

 

こうした状態は、経営者の収入面だけではなく経営的にも厳しいものがあり、このくらいの売上規模であれば、少し受注が減っただけで経営が一気に傾くことも大いにあり得ます。

 

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次ページデータが示す経営者の「過酷な現実」

※本連載は、小形剛央氏の著書『いきなり事業承継成功読本』(日刊現代、講談社)より一部を抜粋・再編集したものです。

いきなり事業承継成功読本

いきなり事業承継成功読本

小形 剛央

日刊現代

経営者にとって「最後の大仕事」である事業承継。しかし、「後継者が見つからない」という理由で廃業を選択するケースも増えており、無事に承継できたとしても、承継後すぐに経営が立ち行かなくなってしまう「失敗例」も多い。…

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