(※写真はイメージです/PIXTA)

経営者や後継者にとって悩ましいのが、贈与税や相続税といった事業承継時にかかる「税金」です。税金対策に苦慮したり、最悪納税資金を用意できず借金しなければならないケースも存在します。そんなときには、一定の要件を満たせば贈与税・相続税が猶予になる「事業承継税制」が有効です。本記事では、相続に詳しい税理士・公認会計士の小形剛央氏が本制度のしくみや一般措置と特例措置の違い、注意点について解説します。

税負担を軽減する「事業承継税制」とは

事業承継を考えている経営者や後継者にとって大きな悩みのひとつが、会社の株式を贈与、相続するときの税金(贈与税・相続税)です。

 

現に、「事業承継はしたいけれど、贈与税・相続税が高額すぎて、納税資金を確保できない」「株式以外の相続財産が少なかったため、やむを得ず相続税を借金で支払うことになった」といったケースも多く、そうした事業承継にかかる贈与税、相続税の負担が猶予になる制度が「事業承継税制」です。ここでは簡単に制度の概要を説明しましょう。

 

国税庁の資料によると、事業承継税制(正式名称:法人版事業承継税制)は以下のように説明されています。

 

法人版事業承継税制は、後継者である受贈者・相続人等が、円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において、その非上場株式等に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除される制度です

※ 「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)のあらまし」より

 

簡単にいえば、後継者が株式を贈与・相続した場合、一定の要件を満たせば、贈与税・相続税が猶予されるという制度です。

 

具体的な納付税額や要件は会社によって異なりますが、場合によっては数千万円、数億円になる可能性もあります。そんな多額の税金が支払い猶予となるのであれば、経営者、後継者にとっては非常にありがたいですね。

 

優遇措置設立の「背景」

ここで、なぜこうした優遇措置が生まれたのか、その背景についてお話ししていきましょう。

 

この事業承継税制は、2009年(平成21年)4月1日に租税特別措置法が改正され、非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予制度(法人向け事業承継税制)の創設に始まります。

 

当時から中小企業の事業承継問題(後継者不足や相続トラブルなど)が表面化して問題視されており、国としては優遇措置を設けることで事業承継する中小企業の数を増やそうという狙いがありました。

 

ところが実際には、創設以来、この制度の利用件数はほとんど増えなかったのです。その理由は、主として次のことが挙げられます。

 

・納税猶予の対象となる株数は総株式数の3分の2まで
・納税猶予割合について、相続は80%まで
・制度そのものが難解で、利用するための手続きも煩雑
・5年間で雇用を平均8割維持しなければならない
・納税猶予が取り消された場合のリスクが極めて大きい

 

事業承継税制が導入された当初の原則的な措置を「一般措置」といいますが、この一般措置が思ったより浸透しなかったという実情を受けて、2018年(平成30年)度には租税特別措置法が改正され、2027年度までの10年の期間限定で特例的な措置が導入されました。この措置が「特例措置」です。

 

一般措置と特例措置とでどのような違いがあるのか、それぞれの特徴を見てみましょう。

 

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次ページ「一般措置」と「特例措置」の違いとは?

※本連載は、小形剛央氏の著書『いきなり事業承継成功読本』(日刊現代、講談社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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