本調査のポイント
2022年調査の主なポイントは以下のとおり。
1.顧客満足度が「低下」
個人向け生命保険の業界全体の顧客満足度は、2021年に前年比で過去最大の上昇を示したあと、本年調査では「代理店・アドバイザーとのやり取り」、「コールセンター」、「ウェブサイト」に対する満足度の低下により、前年比-2ポイントの774ポイント(1,000ポイント満点)となった。
同様に、個人向け年金保険の業界全体の顧客満足度は、「価格」、「契約内容」、「連絡・案内」に対する満足度が大きく低下し、前年比-13ポイントの789ポイントとなった。
2.生命保険の顧客満足度は「加入期間が長いほど」低下
顧客が生命保険に加入している期間が長いほど、総合満足度は低下する。加入期間が5年以下の顧客の総合満足度は821ポイントであるのに対し、加入期間が6~10年の顧客の場合は785ポイント、11~20年の場合は759ポイント、20年超の場合は756ポイントと、低下がみられる。
また、加入期間が長くなるほど、代理店やアドバイザーが「顧客の最善の利益のために提案を行う」という KPI(重要な業績評価指標)を満たしていると顧客が感じる可能性が著しく低くなっている。
3.代理店・アドバイザーとのやり取りは依然として重要
半数以上(51%)の顧客が、過去3年間に少なくとも1つのデジタルチャネルを利用して、保険会社とのやり取りをしている。これらの顧客は、デジタルチャネルを利用してやり取りをしたことがない顧客よりも顧客満足度が高い。
4.いまだに郵送…「デジタル化」できていない年金保険会社
顧客とのコミュニケーションのデジタル化が進んでいるにもかかわらず、年金保険会社各社では顧客とのコミュニケーションを「郵送」で行うことが増えている。
本年調査では年金保険の顧客の 74%が郵送で書類を受け取るなど、郵送はもっとも一般的な顧客とのコミュニケーション手段であるが、「郵便」チャネルを利用した顧客の総合満足度は他のチャネルを利用した顧客と比較してもっとも低かった。
一方、モバイルアプリの利用率は調査時ではわずか8%にとどまるが、モバイルアプリを利用した顧客の総合満足度は他のチャネルを利用した顧客と比べてもっとも高い水準であった。
5.インシュアテック企業の脅威…「ブランドの差別化」で明暗
生命保険の顧客の半数以上(55%)が、加入している保険会社のブランド評価を、他の保険会社と同等に評価している。しかし、インシュアテック・ブランドに関しては、顧客はこれらの会社をユニークで革新的、かつ手頃な価格での商品提供する会社であると評価する傾向がある。
■J.D. パワー Global Business Intelligence部門、保険業界担当シニアディレクター スティーブン・J・クルーソンのコメント
「個人向け生命保険・年金保険に対する総合顧客満足度は、パンデミック最盛期に一時的に急上昇したものの、現在は、加入期間が長くなるにつれて顧客満足度が低下するという、これまでの長期トレンドに逆戻りしている。
加入期間中に顧客との定期的なコンタクトを維持し、独自の価値提供を強化することに保険会社が苦労していることは、我々のデータから明らかである。これは、将来の潜在的な販売機会を制限するだけでなく、デジタル技術を活用して顧客との関係をよりマルチチャネル化し、顧客の共感を呼ぶインシュアテック新興企業による競争の脅威に、既存企業をさらすことにもつながる」
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