(※写真はイメージです/PIXTA)

70代でも女性は迷うことなく、杖や歩行器を利用して買い物や散歩に出かけます。男性の場合は、歩行器を押してまで散歩するのは「みっともない」と嫌がる人が多いようです。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『80歳の超え方 老いは怖くないが、面倒くさい』(廣済堂出版)で解説します。

さすがに年齢に勝てないのが肉体

■要支援のサービスにもどんなものがあるかを知っておく

 

要介護認定をうけると、「要支援1〜2」から「要介護1〜5」、あるいは「非該当」という認定の結果が出ます。70代の大部分の方は非該当となるでしょうが、最初の入り口が要支援という方も多いです。

 

要支援の考え方は、介護予防です。少し支援があれば自立した生活ができ、運動や交流の場に出かけて元気になって生活してもらおうというものです。

 

2015年の介護保険法改正で、要支援の訪問介護(ヘルパー訪問)と通所介護(デイサービス)は、介護保険制度からはずれて、自治体の総合事業に移行していくとニュースで見ました。自治体独自のサービスに移り変わっていくということです。

 

その理由は、介護保険の財源が厳しくなったためです。要支援はまだまだ元気な人たちだから、予防は自治体でお金を出してやりなさい、というわけです。

 

これにもいろいろ問題はあります。

 

菅義偉元首相が「まずは自助、そして共助、公助」と言って批判もされました。この文言だけを取り上げれば当たり前のような気がします。でも、きちんとした公助がないのに自己責任だの自助を前面に出すことに不信感を抱いた国民は多かったはずです。

 

介護保険制度は本来、公助です。財源は私たちが負担する介護保険料なのですから、この制度を利用するのは私たちの権利と言ってもいいはずです。

 

それなのに、要支援は介護保険制度から切り離して地域の共助でお願いしたいと言い出したのが2015年の介護保険法改正になります。

 

しかし、福祉や見守り、災害対策を地域の共助でやっていくとなると、地域格差の問題が出てきます。財源や人材が豊富な地域もあれば、過疎化でそもそも助け合う担い手がいないという地域もあるからです。

 

介護保険制度は、全国一律同じ料金でサービスを受けられますが、要支援を自治体に任せれば、予算がある自治体とない自治体では料金やサービスが違ってくるかもしれません。

 

私も福祉に関してはそれほど詳しくないので、みなさんは自分の自治体がどういう介護予防のサービスを行っているか調べてみるのもいいかと思います。70代で、少し生活動作に困ってきたときに頼りになるのは、要支援のサービスだからです。

 

要支援のサービスの中には、福祉用具が安く借りられたり、買えたりするものもあります。また、家の中の段差をなくしたり、手すりをつけたりといった住宅改修の補助金が出るはずです。

 

家の中の転倒は、実は多いのです。

 

自分の足元が危なくなってきたら、転ばぬ先の杖ではないですが、予防線を張っておくのもいいでしょう。

 

運動して頭を使っていれば、いつまでも元気でいられると言いたいところですが、年齢に勝てないのが肉体です。認知症の状態がない人も足腰が弱っていく方は多いのです。そういうときは、福祉用具に頼っていいのです。

 

その点、女性は迷うことなく、杖や歩行器を利用して買い物や散歩に出かけます。男性の場合は、歩行器を押してまで散歩するのは「みっともない」と嫌がる人が多いようです。

 

でも外に出ない分、身体は弱っていきます。女性が長生きなのは、とにかく買い物は自分で行きたい、友達とお喋りしたい、お出かけしたいという行動力があるからかもしれませんね。

 

尿漏れが心配で外出しづらい、という男性の話もよく聞きます。女性はナプキンを使うのに慣れています。平気でオムツをはいておしゃれして出かける人も少なくありません。いまは、男性向けにズボンをはいても外からわかりづらいスマートなオムツもあります。

 

便利なものは利用しながら、長く自立して暮らせるようにしたいものです。

 

和田 秀樹
和田秀樹こころと体のクリニック 院長

 

 

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本連載は和田秀樹氏の著書『80歳の超え方 老いは怖くないが、面倒くさい』(廣済堂出版)より一部を抜粋し、再編集したものです。

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