(※写真はイメージです/PIXTA)

EV市場で販売台数トップを誇るテスラ。充電切れなどの問題から普及しないといわれてきたEVですが、テスラはその課題をどのように解決し、カリフォルニアを中心にEVを普及させることができたのでしょうか。みていきます。

 

結局、テスラは「なに」を変えたのか?

以上のように、テスラも常に顧客の視点に立ち、従来EVで指摘されてきた課題を解決するとともに、車が提供していた従来型の価値をコネクテッド環境で白地から再考し、新たな顧客体験を創造している。

 

テスラのデータドリブンな開発アプローチは、ハーバード・ビジネス・スクールのデジタルイニシアチブでも紹介されている。テスラは道路を走るすべてのテスラ車からデータを収集し、分析を行っている。これによって、テスラは車の問題をオーナーよりも先に発見し、課題解決のアプローチでサービス化することもできるようになる。

 

例として、14年10月の「テックパッケージ」の提供が挙げられる。この取り組みでは、ドライバーの事故回避をサポートするためのセンサーやカメラを搭載し、それらから送られてくるデータを解析。その成果として、15年10月に自動運転機能のアップデートが行われた。このようにして改善され続ける車のコンセプトを構築した点も、テスラのユニークなポイントであろう。

 

テスラはこのアプローチを最大限に活用して、自動運転の開発にも取り組む。車から収集したセンサーデータによって、競合他社の10倍の精度で地図を設計できると主張している。

 

実際の走行データに基づく地図情報や走行情報は、自動運転システムのトレーニングに使用され、今日のフルセルフ・ドライビング・モードの開発に活用されている。これら最新の技術がOTAを通して常に顧客の車をアップデートすることになる。大量の情報に基づき顧客体験を高めるサービスを開発し、OTAを有効に活用して短期サイクルでサービスをアップデートできることがテスラの優位性を保つ秘訣となっている。

 

【参考文献】

Blake Morgan(2021),3 Ways Tesla Creates A Personalized Customer Experience,Forbes,May102021


Nathan Furr and Jeff Dyer(2020),Lessons from Tesla’s Approach to Innovation,Harvard Business ReviewFebruary 12, 2020


玉田 俊平太(2015)日本のイノベーションのジレンマ,翔泳社,2015年


Salim Ismail(2014)Exponential Organizations: Why new organizations are ten times better, faster, and cheaper than yours,October 14, 2014

 

 

木村 将之

デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社

シリコンバレー事務所パートナー、取締役COO

 

森 俊彦

パナソニック ホールディングス株式会社

モビリティ事業戦略室 部長

 

下田 裕和

経済産業省

生物化学産業課(バイオ課)課長

 

 

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※本連載は、木村将之氏、森俊彦氏、下田裕和氏の共著『モビリティX シリコンバレーで見えた2030年の自動車産業 DX、SXの誤解と本質』(日経BP)より一部を抜粋・再編集したものです。

モビリティX シリコンバレーで見えた2030年の自動車産業 DX、SXの誤解と本質

モビリティX シリコンバレーで見えた2030年の自動車産業 DX、SXの誤解と本質

木村 将之、森 俊彦、下田 裕和

日経BP

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