求められる「脱炭素」…企業側の課題はコストの高さ
サステナビリティーに関する消費者の意識が大きく変わっている中、自動車産業はどのような方向に向かっているのだろうか。
実際に21年から22年にかけて21カ国において大手企業経営者(CEO、CFOなどの上級役員クラス)と政府・公共機関の上級職2083人(日本からの回答は106人)へ実施した調査では、7割以上の企業が消費者・ステークホルダーからの強い圧力を感じている一方で、気候変動対応の取り組みを進めるうえで障壁となる理由のトップに「コストが高すぎる」を挙げ、開発コストアップに頭を悩ませている現状がうかがえる(図表1)。
「脱炭素」対応でEVシフトを進めるGM、フォード
GM、2025年までにEVと自動運転関連技術に350億ドルの投資
すでに米国では、ゼネラルモーターズ(GM)が積極的な動きを見せている。バイデン陣営の勝利が濃厚となった21年のCESで、GMはEVと自動運転車の開発を強調し、サステナビリティーを前面に押し出したプレゼンテーションを行った。技術開発をますます強める方向性を鮮明に打ち出したのである。
CESの基調講演でGMのメアリー・バーラCEOは、18年から掲げる「事故ゼロ、排出ゼロ、混雑ゼロの世界をつくりあげる」というビジョンを改めて強調した。注目すべきは、温室効果ガスの排出ゼロへのコミットである。同社は2020年11月の段階で2025年までにEVと自動運転関連技術に270億ドル(その後350億ドルに増額を発表)を投資することにより、排出ゼロを推進することを発表している。
21年のCESでは、EV製造の鍵として韓国のLGエナジーソリューションとのジョイントベンチャーで製造するバッテリーセル「Ultium(アルティウム)」を発表。30種類のEVを製造、市場に投入する計画を打ち出した結果、CESでの発表から僅か10日でGMの株価は20%近くも上昇した。
22年のCESでは、「2025年には米国の施設を完全に再生可能エネルギーで稼働、2030年までに北米と中国の製造拠点の50%以上をEV生産に切り替え、2035年までに小型車と大型車の全車両をEV化、パリ協定で合意された2050年を10年前倒しし、2040年までに完全なカーボンニュートラルを実現する」と発表し、時間を追うごとに気候変動対応へのコミットを強めている。
以下に、21年のサステナビリティーリポートに記されたGMの気候変動対策の概要を記載しているが、温室効果ガスの排出量の84%は販売後の車の利用から発生している。販売後の車の利用からの排出削減手法としてEVへのシフトを急激に加速させている状況もうかがえる(図表2)。
フォード、2030年までに完全にEVへ切り替え
一方で、米国第2位の自動車メーカーであるフォード・モーターは、2050年までのカーボンニュートラルにコミットしている。2035年までのバッテリー開発を含むEVへの投資を、従来の220億ドルから2030年までに300億ドル以上に拡大させ、2030年までに世界販売台数の50%をEV化、欧州では2027年までにゼロエミッション車に移行し、2030年までに完全なEVに切り替えると発表しており、EVシフトをますます強めている(図表3)。
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