「お願いだから消えてくれ」…部下を自殺へ追いやった上司に、裁判所が下した判決【弁護士が解説】

「お願いだから消えてくれ」…部下を自殺へ追いやった上司に、裁判所が下した判決【弁護士が解説】
(写真はイメージです/PIXTA)

パワハラは労災として認定される場合がありますが、その基準はどのようなものなのでしょうか。また、パワハラについて労災申請された場合、会社側はどのような対応を取るべきなのでしょうか。パワハラが労災認定される基準と、会社側の適切な対応について、Authense法律事務所の西尾公伸弁護士がくわしく解説します。

パワハラが労災認定される基準

パワハラが労災認定されるかどうかの基準として、次の3つの要件が定められています※2

※2 厚生労働省:精神障害の労災認定

 

これらをすべて満たす場合には、労災認定がされる可能性が高いでしょう。

 

それぞれの要件は、次のとおりです。

 

1.被害者が認定基準の対象となる精神障害を発症していること

パワハラが労災認定されるための1つ目の要件は、被害者が認定基準の対象となる精神障害を発症していることです。

 

認定基準の対象となる精神障害の代表例はうつ病や急性ストレス反応などで、アルコールや薬物による障害、認知症などは認定基準の対象からは除外されています。

 

2.発症前おおむね6ヵ月間に業務による強い心理的負荷が認められること

2つ目の要件は、発症前おおむね6ヵ月間に、業務による強い心理的負荷が認められることです。

 

この判定においては「業務による心理的負荷評価表」が設けられており、期間内に精神的な苦痛を感じる「特別な出来事」に該当する出来事があったかどうかや、長時間労働の度合いなどを当てはめて、心理的負荷の強度の評価を行うものとされています。

 

心理的負荷の強度が「強」と評価された場合、2つ目の要件を満たし、「弱」や「中」と評価された場合は労災認定されません。

 

3.業務以外の心理的負荷によって発病したものではないこと

3つ目の要件は、業務以外の心理的負荷によって発病したものではないことです。

 

厚生労働省により「業務以外の心理的負荷評価表」が設けられており、たとえば「離婚又は夫婦が別居した」や「配偶者や子供、親又は兄弟が死亡した」など、各項目にあてはまる出来事があったかどうかがチェックされ、業務以外の心理的負荷の強度が評価されます。

 

また、精神障害の既往歴やアルコール依存状況なども、精神障害の発病の原因であるか判断されます。

 

ただし、業務以外の心理的負荷があるからといって、精神障害の発症に業務起因性がないと直ちに判断されるわけではありません。

 

業務による心理的負荷の強度などと併せて総合的に判断された結果、その精神障害の発症が労災であるかどうかが判断されます。

 

次ページパワハラが原因で労災が認められた裁判事例

本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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