横並び意識は時には副作用を生みかねない
日本では転社、転職への抵抗感はだいぶ減りました。転職市場は活発です。ひとつの会社で生涯勤め上げるというケースは減っていくでしょう。私たちは、会社の所属物ではありません。価値観などが合わなければ、会社を変えればいいと思います。
それでも、会社を変えただけで自らの所属意識が強いままでは、会社の価値観に翻弄され、自分の仕事人生を楽しむことができないかもしれません。私たちは会社の所有物ではなく、会社とは労働力、技術、能力を提供して、対価を得る場です。会社の一方的な価値観、評価に染まらないセンスが大切かなと思います。
自考して、常に自分の能力を客観的に評価できる力を備えておく。自考して、自立した個として、対等な意識で会社、組織と向き合うべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。終身雇用制が少しずつ崩れていくかもしれない今後、会社もそうした自立した従業員を選ぶようになるかもしれません。
■「同期意識」の弊害 会社にとっては都合が良いけれど……
会社への所属意識を助長する仕組みのひとつが「同期意識」ではないかと思います。会社は入社した同期のメンバーごとに研修をし、一体感を養います。横並び意識が植え付けられます。
従業員も自ら同期の飲み会を催します。ここで生まれる一帯感は励みや支えになる一方、その横並び意識は時には副作用を生みかねません。
「同期で一番早い昇進」
「あの期はみんな優秀だ」
こうした同期意識は、同期同士の競争心をかき立て、一律感を迫り、忠誠心をあおります。脱落しようとした時、同期社員は励ましてくれるでしょうが、それは会社側から見ると、ダメ従業員が出ることを抑制する機能になります。
同期意識、同期主義がもたらす一体感や、ある種の充実感は、個々の従業員が自考する機会を奪っていないか。
同期意識、同期主義は、きっと会社組織にとっては都合が良いのではないかと思います。横並びの発想は、学校や職業選択においても判断を狭める作用をもたらすことがあります。高校浪人、大学浪人、留年など、必要なら遠慮なく選択すればいいのです。
しかし、「同学年のあいつに後れを取りたくない」といった感情が、今やりたい思いを抑制するといったことはないでしょうか。高校、大学の途中で休学して、その時にしかできない何かにトライしたっていいはずです。その大学に行かなければ、やりたい仕事に就けないのならば、何年かかっても挑戦するべきです。横並び意識に翻弄されずに、自分の道を自考して選び取る力をつけられれば、素晴らしいと思います。
岡田 豊
ジャーナリスト