6―おわりに
以上のとおり、健康・医療に関する情報の電子化や共有によって、事務コストの軽減と医療費の削減するシステムが整ってきた。よりこのシステムを効果的に使うためには、患者がマイナンバーカードを使い、医療機関に自分の健康・医療情報を提供したり、マイナポータルを使って自分の健康に関心を持つことが欠かせない。
2021年10月にマイナンバーカードを保険証として利用しはじめた当初は、従来の保険証を使うよりマイナンバーカードを使った方が初診料等が高く設定されており、マイナンバーカード利用に対する「逆インセンティブ」と揶揄されたが、2022年10月にその逆インセンティブは解消し、カードリーダを設置している医療機関ではマイナンバーカードを使った方が安くなった。
特に、2024年秋以降原則として保険証廃止するという方針の発表は、「マイナンバーカード取得状況と使途・今後利用したいサービス*6」で紹介したとおり、マイナンバーカード取得に向けた強いメッセージとなったと思われる。さらに、2023年4月からは、従来の保険証を使った場合の初診料が当面の間、更に高くなる等、マイナンバーカード利用者の初診料が有利にすることが検討されており、マイナンバーカードの取得・利用を促す力が強く働いている。
その一方で、マイナンバーカードやカードリーダは国が想定するほどは普及していない。そこで、次稿では、マイナンバーカード普及状況、医療機関におけるカードリーダ普及状況と、利用意向に関するアンケート調査の結果を紹介する。
*6:村松容子「マイナンバーカード取得状況と使途・今後利用したいサービス」ニッセイ基礎研究所 基礎研レポート(2022年11月16日)