(写真はイメージです/PIXTA)

健康・医療・介護領域のビッグデータを集約したプラットフォームを構築する「データヘルス改革」が進められてきました。また新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえて「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太方針202)」に掲げ、厚生労働省のなかでは「医療DX令和ビジョン 2030」厚生労働省推進チームが発足しました。ニッセイ基礎研究所の村松容子氏が、データヘルス改革集中改革プランの進捗と、新たに掲げられた医療DX推進で目指すデータプラットフォームの将来像について解説します。

1―はじめに~健康・医療情報プラットフォーム構築と利活用の概要

高齢化や医療技術の進歩による医療費高騰を背景に、医療や介護の質を向上しつつ、医療費や介護費の適正化を図ることが喫緊の課題となっている。実現に向けて、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を活用し、効率的・効果的な健康管理・診療サービスを提供したり、治療や予防の成果を評価するために健康・医療・介護領域のビッグデータを集約したプラットフォームを構築する「データヘルス改革」が進められてきた*1

 

推進にあたり、2020年7月~2022年夏までの期間を集中期間とし、データヘルス改革で予定されていたサービスのうち、「全国で医療情報を確認できる仕組みの拡大」「電子処方箋の仕組みの構築」「自身の保健医療情報を活用できる仕組み(PHR)の拡大」の3つのサービスを集中改革プランと呼び、本格運用を目指してきた*2

 

さらに、新型コロナウイルス感染症流行を踏まえて、平時からのデータ収集の迅速化や収集範囲の拡充、医療等のデジタル化による業務効率化やデータ共有を加速することを「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太方針202)」に掲げ、9月には厚労省内に「医療DX令和ビジョン 2030」厚生労働省推進チームを発足した。医療DXは、「全国医療情報プラットフォーム」「電子カルテ情報の標準化、標準型電子カルテの検討」「診療報酬改定DX」の3つの分野で議論が進められる予定である。

 

本稿では、データヘルス改革集中改革プランの進捗と、新たに掲げられた医療DX推進で目指すデータプラットフォームの将来像を紹介する。

 

*1:村松容子「10月からオンライン資格確認本格運用」ニッセイ基礎研究所 保険・年金フォーカス(2021年7月27日)

*2:村松容子「データヘルス改革 集中改革プラン~いよいよPHRシステムが稼働」ニッセイ基礎研究所 保険・年金フォーカス(2021年1月26日)

2―マイナンバーカードの利用と、オンライン資格確認

マイナンバーの割り当てによって、各人の生涯にわたる健康・医療データ一元化が可能となった。さらに、今後受ける健康・医療サービスの情報を一元化するために活用されようとしているのがマイナンバーカードである。2021年10月に、マイナンバーカードの保険証としての利用が始まり、2022年10月に、2024年の秋を目処に現行の保険証が原則として廃止される予定であることが公表された。

 

マイナンバーカードを保険証として利用する場合、医療機関や薬局では、まず、カードリーダを使ってオンライン資格確認システムを介して受付を行う。オンライン資格確認とは、社会保険診療報酬支払基金(支払基金)と国民健康保険中央会(国保中央会)から、受診者の健康保険資格情報等をリアルタイムで提供する仕組みである。これまで、患者が受診をする際、医療機関で月初に保険証を提示して、加入している健康保険の資格を確認していた。しかし、月初の確認だけでは、加入している健康保険が変わった場合に把握できず、資格喪失後の受診に伴う保険者や医療機関等での請求確認等に事務コストがかかっていた*3

 

オンライン資格確認導入後は、医療機関等の受付で、マイナンバーカードの場合は顔(または暗証番号)による認証や、従来の健康保険組合の場合は記載されている記号番号等の入力によって、リアルタイムで確認できるようになった。既に対応している医療機関では事務負担や人件費の削減を実現しているほか、資格過誤による返戻レセプトが減少していることが報告されている*4

 

*3:厚生労働省医療保険部会資料「オンライン資格確認の導入によるメリット(平成30年5月)」によると、資格過誤に起因する保険者の事務負担は年間約30億円程度、医療機関等の事務負担は年間約50億円程度と試算されている。

*4:社会保険研究所「社会保障旬報 No. 2865(8月21日)」

 

次ページ3―データヘルス改革・集中改革プランの進捗

※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年1月12日に公開したレポートを転載したものです。

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