4―その他のデータ連結・共有に関する進捗
1|各種データベース連結の状況
データヘルス改革では、主として診療などの効果を分析する研究目的として、国内の健康・医療に関連する各種データベースのNDB(ナショナルデータベース:特定健診の結果とレセプトを登載)との連結が進めている。既に、介護DB、DPCデータは連結されている。
今後、連結を検討している公的データベースは、障害福祉、予防接種、感染症、指定難病、小児慢性特定疾患等のデータベースである(図表1)。連結されれば、研究者などは、完全に個人がわからないように匿名化された上で分析を行うことができる。
次世代医療基盤法に基づくデータベースは、医療分野の研究開発での活用を促進するために、認定された業者が医療機関の電子カルテ、健診情報やレセプトを患者ごとに紐付け、匿名化したうえで作成される。現在のところ、認定された業者は3団体に留まる。次世代医療基盤法は、定期的に見直すことになっており、現在、認定業者の増加も企図しつつ、患者のプライバシーを厳格に守りながら、より活用できるように2023年度の見直しに向けて議論が行われている。
医療DXで構築を目指している「全国医療情報プラットフォーム」では、オンライン資格確認システムのネットワークを拡充し、レセプト・特定健診情報に加え、予防接種、電子処方箋情報、電子カルテ等の医療機関等が発生源となる医療情報(介護含む)について、クラウド間連携を実現し、自治体や介護事業者間等を含め、必要なときに必要な情報を共有・交換することを目指している(図表2)。
2|電子カルテの標準化と普及
医療機関同士でスムーズにデータ交換や共有を推進するため、電子カルテについて、共有する標準的なデータの項目及び電子的な仕様を定めた上で、それらの仕様を標準規格化し、各医療機関で利用するようになっている。
現在のところ、3文書(診療情報提供書、退院時サマリー、健診結果報告書)、6情報(傷病名、アレルギー情報、感染症情報、薬剤禁忌情報、検査情報(救急時に有用な検査、 生活習慣病関連の検査) 、処方情報)を共有する項目としているが、今後、医療現場での有用性を考慮して項目を追加することが考えられている。
また、医療DXの「電子カルテ情報の標準化、標準型電子カルテの検討」では、これまで電子カルテを利用していない小規模の医療機関向けに、厚労省で標準の規格に準拠したクラウドベースの電子カルテ(標準型電子カルテ)の開発を行い、2030年を目処に全医療機関で電子カルテを利用することを目指している。
5―情報の取り扱い
患者の保健医療情報は、センシティブな情報である。医療機関等での患者の情報閲覧には、個人情報保護法にもとづき、患者の同意が必要となる。通常時は、医療機関等の受付で、顔(または暗証番号)で認証を行った後、「過去の診療・お薬情報を当機関に提供することに同意しますか」「過去の健診情報を当機関に提供することに同意しますか」といったメッセージが表示される。
同意するかどうかは、医療機関に行く度に聞かれる。救急搬送時や災害時も、原則として本人の同意が必要となるが、緊急性の高く同意が取れる状況ではない場合は、ルールに基づいて閲覧することもある(後日、本人によって誰がどこで閲覧したかを確認することができる)。現在のところ、同意しても、閲覧できる診療・薬等の情報は過去3年に限られるほか、受療する度に同意/非同意を選ぶことができる。
また、自身の保健医療情報を活用できる仕組み(PHR)においては、自分で閲覧するための同意は不要であるが、民間や自治体のアプリ等にマイナポータルAPI等を介してデータを連携する場合は、サービス提供者に対して利用の同意をする必要がある。さらに、国が策定した「民間PHR事業者による健診等情報の取扱いに関する基本的指針(2021年)」により、サービス提供者はデータの取り扱いを厳重に行っている。