(写真はイメージです/PIXTA)

健康・医療・介護領域のビッグデータを集約したプラットフォームを構築する「データヘルス改革」が進められてきました。また新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえて「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太方針202)」に掲げ、厚生労働省のなかでは「医療DX令和ビジョン 2030」厚生労働省推進チームが発足しました。ニッセイ基礎研究所の村松容子氏が、データヘルス改革集中改革プランの進捗と、新たに掲げられた医療DX推進で目指すデータプラットフォームの将来像について解説します。

3―データヘルス改革・集中改革プランの進捗

1|全国で医療情報を確認できる仕組みの拡大

前述のオンライン資格確認システムを使って、患者のこれまでの保健医療情報を共有し、全国の医療機関等で閲覧する仕組みの構築が進んでいる。将来的には救急搬送時にも利用できるようになる。医療機関等では、過去の情報を閲覧することで、検査の重複を避けることができる等、迅速な診断や治療等をすることが可能となり、最適な保健医療サービスを提供できる可能性が広がる。

 

過去の正確な情報を共有することで、患者と医者のコミュニケーションがとりやすくなることが期待されており、診察時間の短縮につながる可能性がある。また、患者にとっては、同じような検査を繰り返すことがなくなるほか、薬の重複や飲み合わせの悪い薬を避けることで身体の負担が軽減される可能性がある。これは医療費負担の軽減にもつながる。

 

2022年9月に運用を開始した。現在、閲覧できる保険医療情報は、40歳以上が受けている特定健診情報とレセプト(患者が受けた保険診療の報酬明細書)に記載されている診療情報や薬剤情報である。今後、手術等情報*5の登載が決まっているほか、2024年度以降には電子カルテ情報の登載もはじまり、アレルギー情報や告知済み傷病名、画像情報等も登載する予定となっている。

 

*5:手術情報は、手術名に病名が入っていることもあることから、他の診療情報と同様に登載してよいか慎重に議論が行われた。

2|電子処方箋の仕組みの構築

1月から、全国的に、電子処方箋管理サービスの運用が始まる。前述のオンライン資格確認等システムを利用した電子処方箋管理サービスは、医療機関と薬局が処方内容を共有するための仕組みで、医療機関は処方箋を同サービスに登録し、薬局ではその処方箋を閲覧して調剤し、患者に薬を渡す。薬局は、調剤内容等を同サービスに登録し、医療機関からも閲覧が可能となっている。

 

このサービスを使うことによって、他医療機関で処方されている薬との重複や、飲み合わせのチェックがシステム上でできるようになるほか、これまでと違い、薬局で紙の処方箋を入力する負担がなくなる。今後、オンライン服薬指導が普及すれば、薬の受け取りがすべてオンラインでできるようになる。

 

患者は、紙の処方箋と電子処方箋から処方箋の形式を選べ、紙を選んだ場合は、これまでと同じように、紙の処方箋を薬局に持参し、処方箋を受け取る。電子処方箋を選んだ場合は、処方箋は電子処方箋管理サービス上にあるため、マイナンバーカードを提示することで薬局が処方箋を受け取ることができる。

 

2023年1月の本格運用開始に向けて、システムや運用面の検証を行うとともに、課題や先進的な取組事例等を収集するために、2022年10月から国内4つの地域で先行導入している。

3|自身の保健医療情報を活用できる仕組み(PHR)の構築

マイナンバーカードを取得すると、マイナポータルを通じて、自分自身の保健医療情報や予防接種歴をPCやスマートフォンから閲覧することができる。自分自身の健康状態を正確に把握することで、健康増進や予防行動をとることが期待されている。現在、閲覧可能な情報は、40歳以上が実施する特定健診情報や乳幼児健診、予防接種(定期接種A類、B類)歴、レセプトに記載されている診療情報や薬剤情報である。当初予定されていなかったものとして新型コロナウイルスワクチンの接種歴も特例的に登載されている。

 

自分が同意するサービスに対して、マイナポータルから自分の保険医療情報を共有できる仕組みが用意されており、自分のデータを民間の健康医療支援サービス等に提供し、より自分にあった助言等を受けることが可能である。

 

次ページ4―その他のデータ連結・共有に関する進捗

※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年1月12日に公開したレポートを転載したものです。

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