(※写真はイメージです/PIXTA)

日本人のノーベル賞受賞が決まると、メディアは大騒ぎし、連日報じます。一方、アメリカやイギリスではニュースの扱いはあっさりしているといいます。ジャーナリストの岡田豊氏が著書『自考 あなたの人生を取り戻す不可能を可能にする日本人の最後の切り札』(プレジデント社、2022年2月刊)で解説します。

苦肉の策?「日本の3氏にノーベル賞」報道

こうしたノーベル賞に日本人は大きな価値を見いだしてきました。世界各国の価値を受け入れることは国際化にも通じ、必要なセンスかもしれません。しかし、他国が決める価値、権威に対し、どこまで傾倒する必要があるのか。そんな斜めの角度からの思考も必要かと思います。

 

同時に、ノーベル賞以外に、日本人自身が自考して決めた賞や評価に、もっと高い価値を見いだしてもいいのではないかと考えます。

 

■ノーベル賞を受賞したのは「その人」か「日本人」か

 

2014年10月、日本人がノーベル物理学賞を受賞することになり、日本メディアは高い関心を持っていました。青色発光ダイオード(LED)を開発、実用化などに貢献した業績が評価された、赤崎勇・名城大学教授、天野浩・名古屋大学教授、中村修二・米カリフォルニア大学教授の3人の同時受賞の発表です。

 

しかし、中村修二さんはアメリカ国籍を取得していたため、国籍の観点から厳密に言うと、「日本人」と表現しにくい部分もありました。日本国は複数の国籍を持つことを認めていないからです。

 

アメリカのニューヨーク・タイムズは「アメリカ人1人(中村氏)と日本人2人が受賞」と報じました。一方、日本のメディアは「日本の3氏にノーベル賞」などと報じました。「日本人」を避け、「日本」と表現しました。あくまでも「日本」にこだわった苦肉の策だったかもしれません。

 

日本人がノーベル賞を取れば嬉しいと思うのは、通常の感覚かもしれません。でも、称賛し、評価すべき対象は、本当は「日本人」でなく、中村修二さん、天野浩さん、赤崎勇さん、という「個人」なのではないでしょうか。

 

岡田 豊
ジャーナリスト

 

 

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本連載は、岡田豊氏の著書『自考 あなたの人生を取り戻す/不可能を可能にする/日本人の最後の切り札』(プレジデント社、2022年2月刊)より一部を抜粋し、再編集したものです。

自考

自考

岡田 豊

プレジデント社

アメリカでの勤務を終えて帰国した時、著者は日本は実に息苦しい社会だと気付いたという。人をはかるモノサシ、価値観、基準の数があまりにも少ない。自殺する人があまりにも多い。笑っている人が少ない。他人を妬む。他人を排…

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