知能を測るなら面接以外の手法を使う
■面接で知能の評価は難しいとされている
日本の採用面接研究の第一人者である、今城志保氏の『採用面接評価の科学(白桃書房)』によれば、外向性が高くて情緒安定性も高い人は、一般的に面接評価が高くなる傾向にあるそうです。
「外向性」とは、社交的・話好きであり、活発な振る舞いをする傾向を指します。「情緒安定性」とは、どんな出来事が起こっても過剰に反応せず、不安に陥らないことです。
つまり、日常的な言葉で言うならば、明るく楽観的な人が面接では「優秀」とされるというところでしょうか。実際にこの二つは、多くの職種で高いパフォーマンスの要素として挙げられますので、「優秀に見える人=実際に優秀」であると言って差し支えないかもしれません。
ところがその一方、今城氏は同書で「知能は、常に面接で評価されるわけではない」という事実も明らかにしました。
「優秀=頭のよい人」というのは真っ先に思い浮かびますが、実際の頭のよさ=知能は、面接ではそれほど評価につながらなかったというのです。
他方、多くの会社で数学や国語などの能力試験の結果が、入社後のパフォーマンスにつながっていることもまた事実です。
つまり、仕事で求められる知能とは、人が面接で無意識のうちに評価する優秀さとは異なっており、面接以外の評価方法がなければ見過ごされてしまうものなのです。
なぜこのようなことが起こるのかは明確には判っていませんが、おそらく以下のようなことではないかと私は考えます。
まず、人は自分より頭のよい人の「頭のよさ」を評価することが難しい、ということです。もし科学に詳しくない人がアインシュタインと話すことができたとしても、彼の話す理論はおそらく理解不能で、評価のしようもないでしょう。つまり彼を評価するためには、彼の理論を理解できる知能が必要になり、そうでなければ理解のできるレベルまで話を流してしまうのです。
また、特定の仕事で成果をもたらす能力は、仕事や会社によって異なるという、「領域固有性」が知られています。「領域固有性」とは、能力にはそれぞれに相応しい課題を処理するため、相互に独立していることを指しています。
例えば将棋が上手いからといって、必ずしも経営戦略を考えられたり、プログラミングに長けていたりするわけではないということです。このように、一言で知能と言っても、自社の仕事上で発揮できる知能なのか、そうではないのかがわかりにくいのです。
面接だけで知能を推し量るのは避けた方が無難でしょう。
・面接では、外向性や情緒安定性が評価される一方、頭の良さ・知能はそれほど評価につながらない。
・知能を測りたいのであれば、能力試験など面接以外の手法を使う。
曽和 利光
株式会社人材研究所 代表取締役社長