(※写真はイメージです/PIXTA)

優秀な人材には自社以外にもたくさんの魅力的な求人が来ていて、各社に対する志望度は相対的に下がっています。だから志望度を評価基準にしていては、優秀な人材を獲得することができません。人事コンサルタントの曽和利光氏が著書『人材の適切な見極めと獲得を成功させる 採用面接100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。

面接はさまざまな心理バイアスが入り込む

■「思っていること」ではなく「やってきたこと」を聞く

 

服部泰宏氏の『採用学(新潮選著)』の中で、選考手法の妥当性を研究したものがあります。その中で最も妥当性の高い選考手法は「ワークサンプル(入社後に求められるスキルをテストする)」でしたが、採用選考において最も一般的な手法である「面接(正確には「非構造化面接」)」は、最も妥当性の低い手法という結果でした。

 

メジャーな選考手法である面接が、実は精度の低い選考手法である理由は、ここまで述べてきたように人が人を評価する際に、さまざまな心理バイアスが入り込むからです。

 

ここまでは心理バイアスが入り込まないことに注意を促してきましたが、では具体的に、バイアスを除くにはどうすればよいのか。それは、できる限り面接担当者の感覚や印象、感情などに頼って評価をしないこと。裏を返せば、徹底的に事実をもとにして評価することが、採用面接の基本中の基本です。

 

採用面接において、候補者が語る言葉には2種類あります。それは「思っていること(主観的意見)」と「やってきたこと(客観的事実)」です。例えば、あらゆる面接でよく聞かれる「志望動機」などは、前者の「思っていること」です。

 

「あなたのやりたいことは何ですか」「あなたの将来なりたいものは何ですか」などは、「思っていること」を聞く質問です。「思っていること」は、ただ単に思っているだけなので、やろうと思えば好きに言えてしまいます。

 

よって、面接で聞くのは「事実」を確かめる質問です。それは多くの場合「やってきたこと」、すなわち「過去のエピソード」になります。どのような環境と問題があり、それに対してどのように考えて、何を実行したのか。その結果、どのような苦労が待ち受けていて、どう乗り越えて、最終的にどのような結果を得たのか。これを徹底して聞けばよいのです。

 

例えば「志望動機」は、「自社のことをどう思っているか」とか「なぜこの会社に入りたいか」という主観的意見が中心です。自己認知の度合いや価値観を知るためにはよいのですが、内容を事実のように鵜呑みにはできません。これらが上手に言えたからといって、真実かどうかはわからないうえに、それが候補者の印象として評価をゆがませる原因にもなります。だからこそ、事実による裏付けが必要になるのです。

 

ポイント
・心理的バイアスから逃れるには「事実」から候補者の人となりを推定、評価する。
・「志望動機」は、どれだけよいことを言ったとしても、主観的意見が中心なので鵜呑みにできない。

 

次ページ志望度は高めるもので評価するものではない

※本連載は、曽和利光氏の著書『採用面接100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、再編集したものです。

採用面接100の法則

採用面接100の法則

曽和 利光

日本能率協会マネジメントセンター

採用活動における「面接」は、最もポピュラーな採用選考の方法です。 しかし、これほど普及していながら、「人材をきちんと評価できているか?」「うまくコミュニケーションは取れているか?」「内定を出しても辞退されやすいの…

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