子どもの帰省後は1週間落ち込む
■「ひとりを楽しめるスキル」は身につけておきたい
東京都内の古い団地に住むM子さんは、認知症の診断は受けていますが、それほど進行はしていません。外出は膝が痛いのでデイケアへ行くくらいでした。
家の中では自立して過ごしていますが、買い物は不便です。宅配も頼みますが、衣服やもろもろ自分で買いたいときもあります。そんなときは、神奈川に住む息子さんが車で来て、買い物に連れて行ってくれるそうです。
そんな話を聞いて私は「いい息子さんですね」と言いました。ところが、M子さんは「でもね。買い物の荷物を玄関に置いて、忙しいからってお茶も飲まないで帰っちゃうんですよ」と呆れ顔で笑いながら話しました。
M子さんは笑っていましたが、そのさびしさはこちらにも伝わってきました。M子さんは、ひとりでお茶を飲み、たぶん気分を立て直してから、買ってきたものの片づけをするのでしょう。
ほかのひとり暮らしの方からも「子どもや孫が盆や正月には来てくれるけど、帰るとさびしくて一週間ぐらいは落ち込んでしまって」という話を聞きます。
高齢者のひとり暮らしが増えることを考えると、私たちは身体の健康だけではなく精神的にもタフでなくてはいけないのだと思ってしまいます。
ひとりでも楽しめるスキル、家族だけに精神的に依存しないスキル、他者と交流するスキルも必要なことだと考えます。
和田 秀樹
和田秀樹こころと体のクリニック 院長
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