(※写真はイメージです/PIXTA)

今後、高齢者のひとり暮らしが増えることを考えると、私たちは身体の健康だけではなく、精神的にもタフでなくては生きていくことができません。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『80歳の超え方 老いは怖くないが、面倒くさい』(廣済堂出版)で解説します。

遠距離に住む子どもが増えた結果

■ひとり暮らしの高齢者は確実に増えている

 

国の2019年の世帯調査を見ると、65歳以上の高齢者では単独世帯が49.5%あり、つぎに夫婦のみの世帯が46.6%となっています。

 

統計上は単独世帯になっていますが、実際は子どもと同居している高齢者や敷地内に別々に家を建てているという方もいるでしょう。それでも65歳を過ぎるとひとり暮らしが増えてくると考えていいと思います。夫婦のみで暮らす世帯もいずれ、どちらかが先に死に、ひとり暮らしになっていきます。

 

65歳以降の高齢者が「子と同居」という例は、確実に減っています。その中でも「子夫婦との同居」は減っていますが、「配偶者のいない子」との同居は増えています。この配偶者のいない子も高齢者ひとり暮らしの予備軍だと思いますので、単独世代はますます増えていくのではないかと考えられます。

 

子どもがいても頼れないという方も多くいます。

 

いちばんの原因は、遠距離に住む子どもが増えたことです。しかし、これまでは地方の方が都会に仕事を求めて暮らすというのが多くのパターンでしたが、最近では都会で生まれて実家はあるが、地方や海外に仕事を見つけて移住してしまうというケースも多くあります。

 

どちらにしても、生まれた家に縛られず好きなところで暮らせるというよい面がありますが、親の老後に遠距離介護という課題が待っているでしょう。

 

そのうえ、働き盛りの子どもは忙しく、長時間労働で有給休暇消化もままなりません。結婚していれば、家のローン、子どもの受験、さまざまなことに忙しくて親のことを顧みている暇はないようです。

 

親のほうも子が大変なことは重々承知していて、子どもに対して遠慮して困っていることを言わないようになります。

 

本当は離れていても密にコミュニケーションをとっていればいいのですが、子どものほうは「親は元気でやっている」と思い込むことで日々をやりくりしています。

 

そこに親が突然倒れたと連絡が来るのです。

 

子どもはひさしぶりに帰って親の老いと実家の乱雑さに気がついて愕然とする、という事態はよくあることです。

 

遠距離に住んでも、いまは高齢者もスマホを使って子とやり取りをすることも多く、孫の写真や動画を見ることができます。しかし、孫の入学式やピアノ発表会の写真を見るだけと実際に一緒に同じ時間を過ごすこととは全然違います。そのために、心理的距離が開いていきます。

 

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本連載は和田秀樹氏の著書『80歳の超え方 老いは怖くないが、面倒くさい』(廣済堂出版)より一部を抜粋し、再編集したものです。

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