「もうこれ以上は無理」まで自分を追い込む
■スクワットの「チクワ」は最初からナシに慣れる
クワットの場合、足の幅は肩幅が基本。鏡が前にないときは、ダランと手を自然に伸ばし、人差し指の指先の示す場所に踵がくるように。これでちょうど肩幅になる。膝は足先と同じ方向に曲げていく。シャフトの手幅は81㎝の印を目安にして、担いで安定する場所を探す。初心者用にシャフトに巻くウレタンのクッション(その形から俗にチクワ等と呼ぶ)があると担ぐときの擦れがなくなり少し楽になるが、クッションの2、3㎝の厚みでシャフトが体から離れバーベルとの一体感が損なわれる。
実は私もずっとチクワを使っていた。ある程度の重さを担ぐとシャフトと僧帽筋が擦れて痛い。赤い擦れ傷が最初はつく。しかしシャフトにこれを巻かず、直接担いでみたら(ベテラン・トレーニーの真似ですね)擦れにも慣れ、むしろ安定するようになった。まったくの初心者なら、チクワなしで最初から担ぐ練習をした方がいい。
デッドリフトの手幅は、指を広げ自然に手を伸ばして腰に当て、親指が当たる位置。要は手を伸ばして上体を傾け、再び伸び上がるときに、シャフトを握る手が足に当たらなければいい。
足は腰幅で足先は水平でまっすぐ。パワーリフト競技では極端に両足を開く(俗にスモウデッドリフトという)場合もあるが、初心者には当分は無縁な世界。手の握りも両手ともに順手で親指をキチンとシャフトに回す(サムアラウンド・グリップ)から覚えていく。
■苦しいけど大事な「スティッキング・ポイント」
最も負荷がかかりやすい姿勢=「動作のなかでいちばんキツイ体勢」をスティッキング・ポイント(sticking point =障害とか行き詰まり)という。いちばんキツイということは筋肉にとってはいちばん刺激になるということだ。
たとえばスクワットなら腰を折って膝を曲げて沈み込み、太ももの後ろ(ハムストリング)あたりが地面と水平になるくらいからキツくなり始め、太ももの前(大腿四頭筋)あたりが地面と水平になる場所までが最も辛い場所となる。ちなみにこのとき、正しいフォームになっていると、太ももの前側と地面は平行に、背中とスネも平行になっているはずだ。
ベンチプレスだと胸から上げ始めて10㎝ほど、ちょうど肘が直角になるあたりがスティッキング・ポイントになる。デッドリフトなら最初の動き出しから、股関節の伸ばし始めあたりがいちばん辛い。ただしこれらの場所については多少の個人差があるようだ。
扱う重量に無理があると無意識のうちに「スティッキング・ポイント」を避ける。デッドリフトなら沈み込みが浅くなり、ベンチプレスだと「ちょこちょこ」と上げ下げしてしまうから効果も薄い。「どんな動きであれ、可動範囲一杯に動かすこと」が基本とよくいわれるが、これは「スティッキング・ポイント」をきちんと通過することで強い刺激が与えられるためだ。
■いちばん大切なこと
最後に、トレーニングでいちばん大切なことを書いておく。初心者から経験者までみんなわかっていることだ。わかっているが、特にひとりでトレーニングしていると、ついいい加減になってしまう。疲れて投げ出しそうになる。私の自戒でもある。
いちばん大事なのは10回なら10回のセットで全力を出し切ること。2セット目、3セット目と、ウエイトが軽くなっても最後の10回目を上げたときに「もうこれ以上は無理デス」となるまで自分を追い込むこと。そのために……。
もう一息
もう一息と言ふ処でくたばつて
は何事もものにならない。
もう一息
それにうちかつてもう一息
それにも打ち克つて
もう一息。
もう一息
もうだめだ
それをもう一息
勝利は大変だ
だがもう一息。
『もう一息』武者小路実篤/『武者小路実篤全集』(小学館)
城 アラキ
漫画原作家
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