いい体には体を絞りキレを作る必要が
【理論編】
■筋トレだけで「いい体」は無理
「SEIBUGYM」にも「いい体になりたい」という目的で、何年も前からトレーニングを続けている人がいるという。筋肉が付き、挙上重量も増えている。が、多分本人が望む「いい体」とは少し違うようだ。「いい体」=ボディメイクのためには、どこかの段階で体を絞りキレを作らなければならない。体を絞るなら筋トレと並行して有酸素運動をやればいいのではないかと思うだろうが少々違う。
ここがダイエットとボディメイクの違いだ。
実は、有酸素運動だけでキレはできない。マラソンランナーを見れば明らかだろう。有酸素運動では、脂肪だけでなく筋肉まで落ちてしまうからだ。これを「カタボリック」(筋肉の分解作用)といって、トレーニーには呪いの言葉のように恐れられている。想像してみて欲しい。
この筋肉を作るためにいったいどれほどのバーベルを上げ続けてきたことか。どれほどのプロテインを摂取してきたか。さながら崩れやすくもろい「筋肉」という超薄切り極上肉を、そっと積み重ねるように作ってきたのだ。1gだって失いたくはない。
実は、有酸素運動だけではなく、筋トレでも脂肪、筋肉が同時に落ちる。しかし、筋肉は強い負荷のために細胞が損傷する(トレーニングはこのために行うわけだが)と、その後、栄養を摂取することでむしろ修復強化される。これをアナボリック(筋肉の合成作用)といって、トレーニーには拍手喝采で迎えられる。減量中には、食事から極端に脂肪分を削り、同時にタンパク質摂取を増やし、トレーニングを続けるのも、筋肉だけは筋合成でなんとかその減少を最小限にとどめたいためだ。
コンテストビルダーも脂肪を落とすのは食事によってであり、有酸素運動は最後の最後、残りの1〜2㎏を落とす手段としてとっておくという。
大事なのは、食事制限をしながら、トレーニングで筋肉は刺激し続けること。これは実はかなり矛盾した行為で、無理がある。ガソリンタンクがほとんど空の車でエンジンがプスプスと元気がない状態でレースをやれというようなものだ。しかし、これを乗り越えないと「いい体」にはならない。この大変さと葛藤については最終章でも触れる。
■トレーニングだけでは痩せないどころか太る理由
「痩せたいなら運動より食事制限」という理屈は男性の筋トレに限らない。女性誌のダイエット特集などでは「運動だけでは痩せません」はさすがに常識になっている。そのとき、しばしばこんな例が持ち出される。
仮に1個300kcalのショートケーキを食べたとすると、運動だけでこれを消費するには約2時間のウォーキング(体重50㎏の場合)が必要。もし脂肪1㎏(7200kcal)を落とそうとすると、これはフルマラソン4〜5回分のエネルギー量に相当する。
まぁ毎度雑誌の比喩は少々乱暴で極端だが、要は運動で落とすより、そのケーキの一口を我慢した方がよほど楽ですよと言いたいわけだ。
それだけではない。運動をすると当然お腹が空くので、つい食べ過ぎてしまう。このときに、運動で流した汗を思い出し「あんなに運動したんだからもう少し食べてもいいはず」と、都合良く考えてしまう。結果、運動しているのにかえって太った、となる。
それなら運動などしない方がいい、と、早とちりをしてはいけない。運動をせず食事制限だけだとどうなるか。いちばんよく知られているのが、食事だけのダイエットでは「サルコペニア肥満(筋肉が不足した状態での肥満)」が起こりやすくなることだ。