(※画像はイメージです/PIXTA)

不動産投資を始めるうえで最も気になるのが、「どのようなリスクがあるのか」ということです。事前にリスクの内容を知り、対処法の有無・内容まで押さえておけば、事前に回避することや、リスクが顕在化したときに慌てず対応することができます。本記事では、不動産投資において最低限押さえておくべき典型的な7つのリスクの内容と対処法について、不動産投資の段階ごとに整理してわかりやすく解説します。

目次
はじめに|不動産投資のプロセスとリスクの種類
1. 不動産物件の維持存続に関するリスク
リスク1|災害・地震のリスク
リスク2|修繕費・管理費等がかさむリスク
2. 賃料収入に関するリスク
リスク3|空室リスク・賃料値下げリスク
リスク4|賃料滞納リスク
3. ローン返済に関するリスク
リスク5|金利上昇のリスク
リスク6|死亡、就業不能のリスク
4. 不動産物件の売却に関するリスク
リスク7|値下がり・売れないリスク
まとめ

はじめに|不動産投資のプロセスとリスクの種類

はじめに|不動産投資のプロセスとリスクの種類
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

不動産投資のリスクは、プロセスごとに問題となります。したがって、まず、不動産投資とは何か、どういうプロセスを踏むかを簡単に説明します。

 

不動産投資とは、不動産を購入し、賃貸して収益(賃料収入)を得たのち、売却して売却代金を得ることをいいます。すなわち、以下の3つの段階に分かれます。

 

【不動産投資の3つの段階】

  1. 不動産物件の購入
  2. 不動産物件の賃貸(賃料収入の獲得)
  3. 不動産物件の売却(投下資本回収完了)

 

不動産投資のリスクは、これら3つのプロセス全体を通じて、「利益を上げられない、または投下資本を回収できないリスク」と表現することができます。

 

このリスクは、投下資本を回収する段階、すなわち「2. 賃貸(賃料収入の獲得)」と「3. 売却」の段階に分けてとらえることができます。それぞれの段階におけるリスクを踏まえて、収支の計算・シミュレーションを行ったうえで、納得できた場合に初めて、「1. 不動産物件の購入」に踏み切るべきということです。

 

【賃貸(賃料収入の獲得)段階のリスク】

  • 不動産物件の維持存続に関するリスク:「1. 災害リスク」、「2. 修繕費・管理費等がかさむリスク
  • 賃料収入に関するリスク:「3. 空室リスク・賃料値下げリスク」、「4. 賃料滞納リスク
  • ローン返済に関するリスク:「5. 金利上昇のリスク」、「6. 死亡・就業不能のリスク

 

【売却(投下資本回収完了)段階のリスク】

  • 不動産物件の売却に関するリスク:「7. 値下がり・売れないリスク

 

これらのリスクは、投資対象となる不動産の種類を問わず、かつ、新築か中古かを問わず、共通して吟味すべきものです。

 

以下、それぞれのリスクの内容と、対処法の有無・内容について解説します。あらかじめ指摘しておくと、最も重要な対処法は、「借り手」からみて魅力がある優良な物件を選ぶということに尽きます。

1. 不動産物件の維持存続に関するリスク

不動産物件の維持存続に関するリスク
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まず、不動産投資で収益を生む資産である不動産物件の維持存続に関するリスクです。

 

リスク1|災害・地震のリスク

火災、物体の衝突等の事故はもちろんのこと、自然災害、地震によって物件が滅失・毀損する可能性があります。

 

近年、自然災害が頻発、激甚化する傾向があります。2022年だけでも、9月の台風15号、10月の台風19号により甚大な被害が発生しています。

 

また、「日本列島は地震の巣」といわれるように、いつどこで大規模な地震災害が発生するかはまったく読めません。

 

災害リスクへの対処法は以下の2つです。

 

【災害リスクへの対処法】

  1. ハザードマップを確認する
  2. 火災保険・地震保険に加入する

 

(1) ハザードマップを確認する

第一に、ハザードマップを確認することです。災害リスクの有無・程度は、国土交通省が公開しているハザードマップで確認することができます。ハザードマップは、その土地が「洪水」「土砂災害」「高潮」の被害に遭うリスクを示すものです。

 

(2) 火災保険・地震保険に加入する

第二に、火災保険に加入することは必須です。とりわけ、ハザードマップにおいて、被害に遭う可能性が確認された場合、火災保険に「水災」の補償を付ける必要があります。ただし、通常の水災補償ではエアコンの室外機等の屋外設備は原則として対象外です。そこで、それらについてもカバーするのであれば、「特定設備水災補償特約」を付けることをおすすめします。

 

また、地震による被害については火災保険ではカバーされないので、地震保険(火災保険の特約)に加入することをおすすめします。

 

リスク2|修繕費・管理費等がかさむリスク

賃貸借契約においては、賃貸人は、賃借人に物件を使用・収益させる法的義務を負います。したがって、賃貸期間中、以下の費用を負担しなければなりません。

 

【物件の維持管理のため必要な費用】

  • 給排水設備、冷暖房設備の設置費用(リニューアルも見込む)
  • 管理費
  • 修繕積立金

 

また、これらの物件自体に関連する支出以外にも、以下のような支出が発生します。

 

【物件自体に関する費用以外の支出】

  • 固定資産税・都市計画税
  • 所得税・住民税
  • 入居者を募集するための広告宣伝費

 

したがって、これらの費用が発生することを前提として収支を組むことが必要です。

 

特に要注意なのは、中古物件に投資する場合です。物件・設備の状態が悪かったり、既存の修繕積立金の額が少なかったりすると、修繕費・管理費等の負担がかさむリスクがあります。物件の築年数だけでなく、最低限、以下の事項について確認することが必要です。

 

【中古物件に投資する場合の必須確認事項】

  • 給排水設備等を含めた維持管理の状況は良好か
  • 直近にいつ、どのような修繕が行われたか
  • 近い将来に大規模修繕が行われる予定があるか
  • 大規模修繕の予定がある場合に費用がいくらかかる見込みか
  • 既存の修繕積立金の額が十分か

 

なお、敢えて築古の割安な物件を購入し、費用をかけてリノベーションしたうえで高い賃料で賃貸し、高収益を得ているケースもあります。ただし、物件の見極め等について高度なノウハウが必要であり、初心者にはおすすめできません。

2. 賃料収入に関するリスク

賃料収入に関するリスク
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

次に、賃料収入に関するリスクです。主に「空室リスク・賃料値下げリスク」と「賃料滞納リスク」の2つです。

 

リスク3|空室リスク・賃料値下げリスク

空室リスクは、借り手が現れず、その分の賃料が得られないリスクをいいます。また、その結果、賃料の引き下げを余儀なくされるリスクがあります。

 

これについては、投資対象となる物件が、借り手にとって魅力のある物件であるかどうかが重要です。最低限、実際に物件を内覧し、周辺の環境を確認することが必須なのはいうまでもありません。また、以下の4つのポイントに注目する必要があります。

 

【物件の魅力を吟味するための4つのポイント】

  1. 物件自体の現状
  2. 空室率
  3. 周辺の環境
  4. 近隣の類似の物件との比較

 

(1) 物件自体の現状

第一に、物件自体の現状です。以下のような、借り手からみたマイナス要素がある物件は避けたほうが無難です。

 

【借り手からみたマイナス要素】

  • エレベーターがない
  • バス・トイレが3点式のユニットバスである
  • バスが古典的な「バランス釜」である
  • エアコン等がない

 

これらの要素は物件の魅力を損なうものです。賃料を低めに設定しなければ入居者がつかないことがあります。ただし、「バランス釜」「エアコン等がない」といったことについては購入後の改修等で対応することができます。

 

なお、いわゆる「事故物件」にも要注意ですが、事前に有名な「大島てる」で容易に確認できます。また、仲介業者には告知義務があるので、質問すればたいていは教えてもらえます。

(2) 空室率(サブリースにも注意)

第二に、空室率です。空室率が高いと、借り手にとって魅力が薄い物件である可能性があります。低いに越したことはありません。

 

ただし、空室率が低い場合でも、間近で一気に複数の空室が発生する可能性もあるので、要注意です。たとえば、社宅等、複数の住戸を一気に借り上げていて、満期更新されないケース等があります。そのような特殊事情の有無も確認する必要があります。

 

なお、不動産業者のなかには、あらかじめ全住戸を借り上げてくれる「サブリース」をうたっているところがあります。これは、空室がある場合も満室と同じ賃料を保証するものといえますが、要注意です。その理由は以下の通りです。

 

【サブリースが要注意である理由】

  • 優良物件ならわざわざサブリースを付ける必要性・合理性が乏しい
  • サブリース契約を業者側の都合で解約できる旨の条項があることが多い
  • 業者が破綻したらサブリース契約は紙切れになってしまう

 

もし、サブリース付きの物件を検討するのであれば、これらを念頭に置いて、慎重に判断することが大切です。最低限、なぜサブリースが付いているのか理由を確認し、合理的な回答が返ってこなければ、手を出すべきではありません。

(3) 周辺の環境

第三に、周辺の環境です。

 

駅までの距離が近いか、通勤圏・通学圏へのアクセスが良好か、学校や公園、公共施設があるか、治安は良いか、といったことを確認する必要があります。

 

また、将来にわたって賃貸のニーズが続くことを裏付けるデータとして、地域における人口動態、家族構成等も確認する必要があります。

 

(4) 近隣の類似の物件との比較

第四に、近隣の類似の物件との比較です。

 

周辺の賃料相場や固定資産税評価額等の情報を収集し、意中の物件の賃料等が、近隣の同種の物件と比べて適正な水準といえるかを確認する必要があります。

 

なお、将来、近隣に新しい物件が建設された場合、そちらに賃借人を取られる可能性があります。そうなれば、空室率が高くなり、賃料を下げざるを得なくなる可能性があります。この点については、明確な予測は困難です。

 

そこで、収支のシミュレーションをする際に、空室率の上昇と賃料の下落をあらかじめ織り込むことをおすすめします。

 

良心的な仲介業者であれば、それらを織り込んだシミュレーションを提示してくれることがあります。たとえば、賃料が「毎年1%」「●年ごとに●%」など徐々に下がっていくという条件で試算したり、空室率20%程度で採算が合うかどうかを明示したりしてくれます。

 

リスク4|賃料滞納リスク

賃料滞納リスクは、入居者がいても何らかの事情で賃料を払ってくれないリスクです。この場合、実際に収入を得られないだけでなく、以下の2つの厄介な問題が発生します。

 

【賃料滞納の2つの厄介な問題】

  • 滞納賃料についても税金の支払義務を負う
  • 賃貸借契約の解除・立ち退きに至るまで時間と費用がかかる

 

まず、税金の問題です。賃料債権自体は発生しているので、売上として計上しなければなりません。その結果、その分の税金を払わなければなりません。

 

次に、賃料滞納を理由として賃貸借契約を解除し立ち退いてもらうためには、賃料滞納が少なくとも3ヵ月継続しなければなりません。しかも、強制執行をするには訴訟の確定判決等の「債務名義」が必要であり、費用がかかります。

 

したがって、賃料滞納リスクは可能な限り回避しなければなりません。対策は以下の2つです。

 

【賃料滞納リスクへの対策】

  1. 入居者の属性を慎重に審査する
  2. 連帯保証人の設定、または賃料保証会社への加入のいずれかを義務付ける

 

(1) 入居者の属性を慎重に審査する

まず、入居者の属性を慎重に審査する必要があります。職業・勤務先、収入、引っ越しの理由等を確認し、支払能力に問題がないか慎重に判断しなければなりません。

 

(2) 連帯保証人の設定、または賃料保証会社への加入のいずれかを義務付ける

さらに、万全を期すために、連帯保証人の設定、または賃料保証会社への加入のいずれかを義務付けることをおすすめします。

 

連帯保証人は、賃料の滞納があった場合に、直ちに代わりに支払う義務を負うものです。ふつうの「保証人」との違いは、滞納があったときに、賃貸人が賃借人(主債務者)に請求しなくても直接連帯保証人へとかかっていけることです。連帯保証人の立場からすれば、「先に賃借人に請求してくれ」という権利(催告の抗弁権)、「先に賃借人に対して強制執行をしてくれ」という権利(検索の抗弁権)がないということです。

 

このように、連帯保証人の責任はきわめて重くなっています。したがって、親やきょうだいに引き受けてもらうケースがほとんどです。また、近年はなかなか引き受けてもらえなくなっています。

 

これに対し、賃料保証会社を利用する場合、賃料滞納があっても保証会社が賃料を肩代わりしてくれます。また、賃借人からの取り立てや訴訟等の面倒なことも引き受けてもらえます。保証料は賃借人が負担することになります。

3. ローン返済に関するリスク

ローン返済に関するリスク
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不動産投資においては、限りある手持ちの資金を有効に活用するために、ローンを活用して投資効果にレバレッジを効かせることが推奨されています。

 

しかし、ローンを利用する場合、返済できなくなる、あるいは返済計画が狂うリスクがあります。とりわけ重要なのが、「金利上昇のリスク」と「死亡・就業不能のリスク」です。

 

リスク5|金利上昇のリスク

不動産投資でローンを利用する場合、金利は「変動型」です。「変動型」においては金利が年2回見直されます。

 

現在、マイナス金利政策がとられており、金利は1%未満の低い水準で推移しています。しかし、将来、いずれ金利が上昇する可能性があり、それを念頭に置く必要があります。

 

対処法は以下の3つです。

 

【金利上昇への対処法】

  • 余裕のある返済計画を立てる
  • 頭金を大きくして早期に返済を済ませる
  • 繰り上げ返済をする

 

すなわち、金利の上昇を織り込んで余裕のある資金計画を立てるか、あるいは、金利が高くなる前になるべく早期に返済を完了することです。

 

リスク6|死亡、就業不能のリスク

ローンの支払期間中に、死亡したり働けなくなったりして、返済資金を準備できなくなるケースが考えられます。不慮の病気や事故は事前に予想できず、誰の身にも起こりうるものです。

 

このリスクに対処するために、団体信用生命保険(団信)や民間の生命保険(収入保障保険)に加入することをおすすめします。

 

団信は、万一があった場合に残債がただちに完済されるしくみになっています。

 

これに対し、民間の生命保険「収入保障保険」は、万一があった場合に毎月、給料のように一定額の保険金を受け取れるタイプであり、それをローンの支払いに充てていきます。ローンの返済額を賄えるように保険金額を設定する必要があります。

 

保険料は、一般的には団信の方が割安です(毎月のローンの支払額に含まれる形をとります)。ただし、若い人の場合等、民間の収入保障保険を選んだほうが割安となるケースもあります。

 

また、いずれを選ぶにしても、特におすすめなのは、死亡だけでなく、三大疾病(がん、心疾患、脳血管疾患)や所定の就業不能状態になった場合もカバーするプランです。

4. 不動産物件の売却に関するリスク

不動産物件の売却に関するリスク
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

最後に、投資対象となる不動産物件を売却する際のリスクです。冒頭に述べた通り、不動産投資は、不動産を購入し、賃貸して収益(賃料収入)を得たのち、売却して売却代金を得ることをさします。

 

最も理想なのは、賃料収入による利益を得て、かつ、最終的に目的不動産を売却して売却益も得ることです。

 

しかし、最後の物件売却で損失を被ると、せっかくそれまでに獲得してきた賃料収入による利益まで帳消しになってしまう可能性があるのです。

 

リスク7|値下がり・売れないリスク

物件を売却する時点までに、物件が値下がりするリスク、あるいは売却できないリスクがあります。

 

これは、結局のところ、投資対象としての魅力が将来にわたって存続しているかということです。したがって、「空室リスク・賃料値下げリスク」の判断と大部分重複します。すなわち、以下の4つのポイントが重要です。

 

【将来における投資対象としての魅力の判断】

  1. 物件自体の現状
  2. 空室率
  3. 周辺の環境
  4. 近隣の類似の物件との比較

 

これらについては、「リスク3. 空室リスク・賃料値下げリスク」のところで解説していますので、改めてご覧ください。

 

さらに、将来にわたる物件価格の推移について、客観的なデータを用いてある程度予測してみることをおすすめします。

 

有効な方法の一つとして、近隣の類似の物件の情報をできるだけ多く集め、築年数ごとの価格を「築10年」、「築20年」、「築30年」等のそれぞれについて比較していくことが挙げられます。

まとめ

まとめ
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

不動産投資のリスクは、包括的に表現すれば、「利益を上げられない、または投下資本を回収できないリスク」です。リスクの内容については「賃貸(賃料収入の獲得)」と「売却」の段階に整理して、以下のようにとらえることができます。

 

【賃貸(賃料収入の獲得)段階のリスク】

  • 不動産物件の維持存続に関するリスク:「1. 災害リスク」、「2. 修繕費・管理費等がかさむリスク
  • 賃料収入に関するリスク:「3. 空室リスク・賃料値下げリスク」、「4. 賃料滞納リスク
  • ローン返済に関するリスク:「5. 金利上昇のリスク」、「6. 死亡・就業不能のリスク

 

【売却(投下資本回収完了)段階のリスク】

  • 不動産物件の売却に関するリスク:「7. 値下がり・売れないリスク

 

特に重要で、かつ十分な根拠に基づく慎重な判断が求められるのが、賃貸段階の「空室リスク・賃料値下げリスク」、売却段階の「値下がり・売れないリスク」です。この判断こそが死命を制するといっても過言ではありません。

 

本記事で解説した不動産投資のリスクの内容は、あくまでも、基本的なものであり、最低限押さえておくべきものです。初心者が最初から独力で物件のよしあしや投資の是非を判断することはきわめて困難です。しかも、不動産業者の話には多分に「ポジショントーク」が含まれていることがあります。

 

本記事の内容を前提として、既に不動産投資で成功している友人知人や、信頼できる専門家の知見を借り、リスクについて具体的に吟味したうえで、投資の是非を判断することをおすすめします。

 

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