従来の切除法や埋没法等では何故「瞼の問題」を解決できなかったのか?
従来の埋没法(瞼板法)では瞼に対して垂直に糸を結紮して陥入させるため、表面上睫毛から何mmの距離(幅)に二重ラインをどう描くかに終始します。切開や切除に至っては、瞼の皮膚は平面(僅かな曲面)上のデザインでしか捉えられていません。しかも、何れの場合でも閉(開)眼時に瞼の動きを固定してデザインされるため、次元は必然的に2Dレベルにまで落とされてしまいます。
眼瞼下垂治療においても挙筋短縮や前転法では、瞼挙上度の矯正のみが着目され、挙筋腱膜の自然な進展や閉眼時の兎眼防止にまで同時に解決できる方法がありませんでした。つまりどんなに優秀な外科医であっても、瞼の動的な生理学的構造にまで人智が追いついていなかったのです。
目の大きさや形状の左右差を手術で解消するには、本来なら様々な技巧を要する!
開眼時の目の大きさの左右差がある場合、(時折メールでご自身の写真を添付されてご相談される方もいらっしゃいますが)どの部位にどの程度の左右差があるのかを仮に写真で捉えたとしても、実はデザインや手術方針は全く定まりません。
もしも2Dの写真を見ただけで「手術で絶対に治せます。」という医師がいたとしたら、その言動は上記の理由で信用に値しません。御本人様の瞼を触診し、専用のブジ―等でシミュレーションしなければ、皮膚のテンションや厚み、開閉眼の自由度や術後の予後の状態を推し量ることができないからです。
しかも当院は上眼瞼には全切開を用いません。全切開をしてしまうと瘢痕が目立ち、却って別の左右差や開閉眼障害等の重篤な合併症を併発してしまうことが多いからです。瞼のクボミ・タルミ・多重ライン・睫毛の形・眼瞼下垂の有無と程度・眉や鼻スジとの位置関係・開眼度など、個別の左右差の原因と多彩な技術の組合せで必要かつ充分な4Dデザインを施し、最少リスクとコストでその方だけのオンリーワン手術をいつも心掛けています。
「窪んでいるから→注入」、「弛んでいるから→切除」は、あまりに短絡すぎる思考
美容整形医院では実際にカウンセリングを受けると、クボミに対してはヒアルロン酸や脂肪注入、タルミに対しては切除という部分観のみで治療を勧められることが少なくありません。全切開の弊害は過去の連載記事でも充分に述べましたが、注入系の治療で陥凹を埋めた場合には却って瞼が重くなり、閉眼時には凸凹した不自然な形状になることが(当院に修正御希望で御来院された方々に)しばしば見受けられます。
ヒアルロン酸ならまだ溶解可能ですが、脂肪注入されて細胞が壊死を起こしていた場合なら溶解は(生きた細胞にしか効かないメソセラピーやステロイドも無効なため)困難です。すると今度は結局切開して摘出しないと治せないと言われ、組織を切開掻把された瞼の機能や自然さが不可逆的に損なわれ、取り返しのつかない事態になり得ます。事実、その様な医原的問題を抱えた方々の修正依頼が近年増加の一途を辿っています。