(※写真はイメージです/PIXTA)

先代のころから店舗兼住宅を借り、50年以上青果店を営んできた借主。しかし、「倒壊の危険性がある」ということからオーナーに退去を求められました。「いまさら無理」と断った借主でしたが、物件の老朽化も相当進んでいます。退去となった場合、オーナーは借主にどれくらい立退料を支払う必要があるのでしょうか。賃貸・不動産問題の知識と実務経験を備えた弁護士の北村亮典氏が、実際にあった裁判例をもとに解説します。

裁判所は立退料として「720万円」が相当と判断

<ウ.引越費用>

 

弁論の全趣旨によれば、被告らが、本件店舗等から退去するとした場合には、引越費用として、50万円程度の支出を要すると認められる。

 

<エ.住居補償等>

 

被告らは、本件店舗等を住居としても使用しているところ、

 

①転居に当たっては、入居時に、いわゆる礼金等の一時金の支出を余儀なくされると考えられること(公知の事実)、

 

②本件賃貸借契約における賃料2万6,000円は、近隣賃料等と照らしても低額であると考えられ(弁論の全趣旨)、被告らが転居するに当たり、月額賃料の負担も増加することが見込まれること、

 

③住居移転に関する種々の手続等に伴い、精神的負担を被ることになると解されること等の諸事情に照らせば、住居移転に伴う補償としては、70万円をもって相当であると解されるところである。

 

上記で認定した諸事情を総合すれば、本件賃貸借契約の解約に係る正当事由の補完のための立退料としては、720万円をもって相当であると解される。(借家権価格240万円+営業補償金360万円+引越費用50万円+住居補償等70万円)

 

※この記事は2021年1月7日時点の情報に基づいて書かれています(2022年11月17日再監修済)。

 

 

北村 亮典

弁護士

大江・田中・大宅法律事務所

 

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※本記事は、北村亮典氏監修のHP「賃貸・不動産法律問題サポート弁護士相談室」掲載の記事・コラムを転載し、再作成したものです。

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