(※写真はイメージです/PIXTA)
同じ70代なのに、ここまで違うとは…老後を分けた「現役時代の選択」
「年金だけなら、毎月赤字ですよ」
首都圏在住、田中雅彦さん(74歳・仮名)は、妻の久美子さん(72歳・仮名)と二人暮らし。夫婦の年金収入は月約25万円です。持ち家のため住宅ローンはありませんが、固定資産税や修繕費、食費、水道光熱費、医療費を支払うと、生活に大きな余裕はありません。
「生活するだけで精一杯。大型の家電が壊れると、その年の家計は一気に厳しくなります」
退職時に受け取った退職金の多くは住宅ローンの返済に充てました。子どもの大学進学費用も重なり、老後資金として残せた金融資産は多くありませんでした。現在の預貯金は100万円未満。急な医療費や介護費への備えを考えると、簡単には取り崩せないといいます。
一方、東京都在住の佐藤正一さん(75歳・仮名)と妻の恵子さん(73歳・仮名)は、金融資産約4,000万円を保有しています。夫婦の年金額は田中さん夫妻と同程度ですが、生活ぶりには大きな違いがあります。
「年金だけでも日常生活は十分です。旅行や孫への援助は、資産を少しずつ取り崩しています」
資産形成のきっかけは40代でした。会社の財形貯蓄に加え、退職金をそのまま預金に置かず、一部を投資信託や株式で長期運用してきたといいます。
「特別なことをしたつもりはありません。給与が上がった分を生活費ではなく資産形成に回しただけです」
このような差は退職後に突然生まれるものではありません。年金額の違いよりも、住宅ローンを何歳で完済したか、教育費がどれだけかかったか、退職金をどう使ったか、そして現役時代から資産形成を続けたか――積み重ねが大きく影響します。
「現役の頃は住宅ローンと教育費で精いっぱいでした。老後のことまで考える余裕は正直ありませんでした」と田中さんは振り返ります。
一方で、佐藤さんにも不安がないわけではありません。その要因になっているのが、今後の物価上昇に伴う資産の目減りです。
「運用はしていますが、年齢を考えると積極的には増やせません。物価が上がっているので、預金だけでは不安もあります。まあ、ましなほうだという自覚もあります」
同じ70代、同じ年金生活でも、これまで積み上げてきた資産によって、老後の選択肢や心理的な余裕には大きな差が生まれていました。