(※写真はイメージです/PIXTA)

経営悪化のため、契約期間が「4年」となっていた物件を10ヵ月で退去せざるを得なくなった借主。しかし契約には「借主が期間満了前に解約する場合は、解約予告日の翌日より期間満了日までの賃料・共益費相当額を違約金として支払う」との文言が……。このような「違約金条項」の設定は有効なのでしょうか。賃貸・不動産問題の知識と実務経験を備えた弁護士の北村亮典氏が、実際にあった裁判例をもとに解説します。

途中で退去も「残り3年超」分の家賃を求められた借主

【店舗の借主からの質問】

 

当社は、店舗用の物件を1戸借りていましたが、賃貸借契約には「借主が期間満了前に解約する場合は、解約予告日の翌日より期間満了日までの賃料・共益費相当額を違約金として支払う。」という条項が設定されていました。

 

賃貸借契約期間は4年間とされていましたが、借りてからまもなく当社の経営が苦しくなり、10ヵ月程度で退去しなければならないという状況になってしまいました。

 

そのため、違約金条項により貸主からは「まだ契約期間が3年2ヵ月分残っていた状態での中途解約なので、3年2ヵ月分の賃料相当損害金を払ってもらいたい」と言われています。

 

このような特約及び貸主からの要求は正当なものなのでしょうか。

 

違約金条項を「設定すること」自体は有効

まず、借主が賃貸借契約を中途解約する場合に、違約金を支払う旨の条項を設定することは有効です。

 

実務上よくみられるのは、中途解約の申入れを6ヵ月前までに行うとしたうえで、「賃借人の賃貸人に対する予告期間が6ヵ月に満たない場合には、賃借人は賃料及び管理費の不足月数相当額を賃貸人に支払うものとする。」といった条項です。

 

このような条項については、裁判例でも「暴利行為として公序良俗に違反するなどの特段の事情のない限り、上記特約は有効である」とされています(東京地方裁判所平成22年3月26日判決参照)。

 

したがって、本件のように、賃貸借契約の残存期間分の賃料相当額を支払うとする条項についても「暴利行為として公序良俗に違反」しないかどうかが問題となります。

 

本件は、東京地方裁判所平成8年8月22日判決の事例をモチーフにしたものですが、裁判所は

 

「約3年2ヵ月分の賃料及び共益費相当額の違約金が請求可能な約定は、賃借人である被告会社に著しく不利であり、賃借人の解約の自由を極端に制約することになるから、その効力を全面的に認めることはできない。」

 

解約日から「1年分の賃料及び共益費相当額の限度で有効であり、その余の部分は公序良俗に反して無効と解する。」

 

と述べました。

 

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※本記事は、北村亮典氏監修のHP「賃貸・不動産法律問題サポート弁護士相談室」掲載の記事・コラムを転載し、再作成したものです。

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