(※写真はイメージです/PIXTA)

先代のころから店舗兼住宅を借り、50年以上青果店を営んできた借主。しかし、「倒壊の危険性がある」ということからオーナーに退去を求められました。「いまさら無理」と断った借主でしたが、物件の老朽化も相当進んでいます。退去となった場合、オーナーは借主にどれくらい立退料を支払う必要があるのでしょうか。賃貸・不動産問題の知識と実務経験を備えた弁護士の北村亮典氏が、実際にあった裁判例をもとに解説します。

裁判所が立退料を算定する際の「4つの着眼点」

本件の事例は、東京地方裁判所平成25年4月16日判決をモチーフにした事例です。

 

この事例で、裁判所は、建物の老朽化が相当進んでおり、解体の必要性が高いことは認めつつも、長年賃借物件で事情を営んできた賃借人の利益も考慮し、立退き料の支払いと引き換えに、賃借物件からの立退きを認めました

 

では、本件において裁判所は立退料をどのように算定したのでしょうか。

 

裁判所は、

 

1.借家権価格
2.営業補償
3.引越費用
4.住居補償

 

の4点をそれぞれ考慮して立退料を算定しました。

 

上記4点について、それぞれの具体的な算定方法と根拠については、以下判決を引用しますので、立退料算定のひとつの方法として参考になります。

 

【東京地方裁判所平成25年4月16日判決(抜粋)】

 

<ア.借家権価格について>

 

借家権価格については、種々の算出方法があるところ、敷地の更地価格55万円/m2に建付減価・個別性評点を考慮して、本件建物の存する敷地価格を1億1,553万5,000円と評価したうえで、割合方式によって本件店舗等に係る借家権価格を算定すると216万円となる旨の不動産鑑定評価がある(甲10)。

 

もっとも、本件において、上記建付減価・個別性評点による修正を加える必要性・相当性については必ずしも明らかとはいえないことを考慮し、

 

修正をしないものとすると、本件建物の存する敷地価格は1億2,814万4,500円となり、当該価格に基づいて、本件店舗等に係る借家権価格を上記不動産鑑定評価と同様の割合方式によって算定すると240万円となり、当該額をもって相当なものと解される。

 

<イ.営業補償について>

 

(ア)証拠(乙3から6まで)によれば、平成20年から平成23年までのあいだにおいて、本件店舗等で営まれていた青果小売業に関しては、売上金額から原価を控除した金額(粗利益)は、年間250万円から350万円程度であったこと、

 

そこから経費を差し引いた後の金額(営業利益)は、おおむね年間45万円から85万円程度(直近の平成23年度は約85万円である。)であったこと、

 

他方で、上記期間における経費のなかには、減価償却費(中途で事業を廃止した場合には、必ずしも当該支出を免れるとは限らない性質の経費である。)が年間45万円から60万円程度含まれていることが多かったこと等が認められる。

 

上記事情を総合すれば、被告らが本件店舗等における青果小売業を行えなくなる場合において補償されるべき得べかりし利益としては、1年につき120万円をもって相当であると解されるところである。

 

(イ)そして、本件においては、被告らの側には特段の落ち度もなく、本件店舗等からの退去を余儀なくされること、前述のとおり、被告らが代替の賃貸物件を見つけることが困難であり、営業自体の存続も危ぶまれると認められること等を考慮すれば、本件に係る営業補償としては、上記得べかりし利益の3年分をもって相当であると解されるところである。

 

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※本記事は、北村亮典氏監修のHP「賃貸・不動産法律問題サポート弁護士相談室」掲載の記事・コラムを転載し、再作成したものです。

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