(※写真はイメージです/PIXTA)

世の中には「寝込まないで死にたい」という方もいらっしゃいますが、突然にこの世とお別れするのは嫌だなと思う人は、数年に一度、脳ドックや心臓ドックを受けることを考えてはいかがでしょうか。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『80歳の超え方 老いは怖くないが、面倒くさい』(廣済堂出版)で解説します。

「脳ドック・心臓ドック」を勧める理由

■検診を受けるより、数年に一度の脳ドック、心臓ドックを

 

がんという病気は余命を告げられることもありますが、余命半年と言われたのに、何年か生きたなどという事例もあるので、医者の言う余命というものもあてにはならないことが多いものです。

 

誤解されている方が多いようですが、余命2年といわれる場合、平均して2年ということです。1年のこともあれば、3〜4年のこともあります。高齢者では進行が遅い傾向があるので、通常、それより長くなります。また医者によっては余命2年と言って1年で死ぬと藪医者扱いされ、3年生きると名医の扱いを受けるので、短めに言うこともあるようです。

 

ただ、この余命というのは大事です。

 

がんのいいところは、突然死というのはほとんどないところです。逆に、元気だった人が急に死んでしまう病の原因は、心疾患と脳疾患がトップです。

 

西城秀樹さんが63歳で急性心不全で亡くなりました。私は同じ名前なので、自分の中学高校時代には西城さんの活躍に親しみがありました。西城さんは2回も脳梗塞を起こしていましたが、死亡の原因は心臓のほうでした。もしかしたら、脳のほうは毎年の検査はしていたのでしょうが、心臓はノーチェックだったのかもしれません。

 

私は、がん放置療法を提唱する近藤誠先生と『やってはいけない健康診断』(SBクリエイティブ)という本を一緒に出したことがあります。私は健康診断不要論を唱えています。

 

こんなに健診ばかりしている国は日本だけです。検診が有効だというエビデンスも薄いうえに、健診のたびに落ち込んだり薬を飲まされたりする弊害を記しました。

 

そんな本を出した私ですが、心臓ドックはやってもいいと考えています。

 

心臓ドックは、造影剤を使ってコンピューター断層撮影装置(CT)で撮影します。カテーテルを使わなくても、心臓の周囲を囲む血管(冠動脈)が詰まりそうになっているところが発見できます。

 

近藤先生は、この検査は被曝することや身体の負担を考えたうえで反対されていますが、その考え方は私も理解しています。

 

けれども、私には突然死をしたくない気持ちがあります。医者の仕事、撮りたい映画、引き受けてしまった原稿、そういうものを放り出して死ぬのは仕方ないのですが、できたらやれることはやってつぎの人に受け渡して死にたいと思うのです。

 

人に迷惑をかけたくないという律儀な思いではありません。人に任せられない私の性格から来るものでしょう。

 

また、冠動脈が狭窄している場合、バルーンやステント(体内の管状の部分を内側から広げるために使う器具)を使って広げることができます。これらの治療は、日本は世界に誇れる技術を持っています。

 

心臓ドックで被曝するとしても、影響が出るのには20年ぐらいかかります。その頃はあの世に行ってもいい年になっているでしょう。

 

脳ドックも受けていいと思います。

 

これは、認知症を発見する目的で行う方が多いようですが、脳動脈瘤を見つけることもできます。

 

磁気共鳴画像装置(MRI)という機械を使って、いろいろな角度から脳の画像を見ることができますし、脳内の血管の状態を見ることができます。

 

この動脈瘤が破れると、くも膜下出血になるわけですが、いまの時代でもかなりの確率で突然死の原因になります。

 

脳ドックで、これが見つかれば、多くの場合、カテーテルで内側から固めることで破れないようにすることはできますし、血圧のコントロールをしてリスクを減らすこともできます。

 

このようにして、かなりの確率で突然死を避けることはできます。

 

ある意味、がんも認知症も自分の時間を整理し、やり残したことができる穏やかな病気と見ていいのかもしれません。

 

世の中には「突然死で死にたい」「寝込まないで死にたい」という方もいらっしゃいますが、あまりにも突然にこの世とお別れするのは嫌だなと思う方は、数年に一度、脳ドックや心臓ドックを受けたほうがいいでしょう。

 

和田 秀樹
和田秀樹こころと体のクリニック 院長

 

 

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本連載は和田秀樹氏の著書『80歳の超え方 老いは怖くないが、面倒くさい』(廣済堂出版)より一部を抜粋し、再編集したものです。

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