多くのアパート経営者が頭を悩ませる「家賃の不払い」。オーナーの多くは管理会社に一任しているものの、入居者が管理会社による再三の督促にも応じず、直接連絡もつかない場合、コンタクトをとるための手段としての「張り紙」は許されるのでしょうか? 自身も不動産投資家としての顔を持つ山村暢彦弁護士が解説します。
家賃不払いの際の張り紙の問題点とは?
いくら督促状を出しても、返答がない、家賃を支払わない。賃料不払いに悩まされるケースは多いでしょう。
近年は家賃保証会社の利用が進み、不払いの際には保証会社からの支給が期待できる場面も増えてきましたが、まだまだ古いアパートでは大家さん自身が家賃督促をしなければならないケースも多く、トラブルにつながるケースがあとを絶ちません。
そのようななか、近年は賃借人側の権利意識も非常に高まっていますから、不払いだからといって鍵を付け替えるのは言語道断です。自力救済禁止の原則というものがあり、不払いだからと勝手に「仕返し」をすれば、大家さんの側が「住居侵入罪」や「窃盗・横領罪」に問われかねません。
では、今回のテーマである「張り紙で賃料督促することはどのような法的問題があるか?」ということについてです。
まず、脅迫にあたるような、高圧的なことを書いてはいけないのは当然です。「賃料を払わないなら……するぞ!」のような文面です。いくらドアに貼っていて家のなかに入っていないとしても、このような脅迫文面にあたるようなものがあれば、大家さんのほうが警察に怒られます。
では次に、事務連絡的に「〇〇〇〇様、〇ヵ月分の賃料が未払いのため、支払ってください」と張り紙をしておくケースです。大家さん側としては、単なる連絡事項のように感じるかもしれません。
しかし、入居者の個人情報、氏名、年齢などを記載してしまうと、住居に貼ってあるものである以上、簡単に住所と結び付けられてしまうので、個人情報保護の観点、プライバシーの観点から問題がある行為といえるでしょう。
また、「賃料を払っていない」という内容自体が名誉棄損に該当すると判断した裁判例もあるので、事務連絡に感じる内容であっても、安易に他人が見られる状態でこのような張り紙を行うことは問題なのです。実際の裁判例をみてみましょう。
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弁護士法人 山村法律事務所
代表弁護士
実家の不動産・相続トラブルをきっかけに弁護士を志し、現在も不動産法務に注力する。日々業務に励む中で「法律トラブルは、悪くなっても気づかない」という想いが強くなり、昨今では、FMラジオ出演、セミナー講師等にも力を入れ、不動産・相続トラブルを減らすため、情報発信も積極的に行っている。
数年前より「不動産に強い」との評判から、「不動産相続」業務が急増している。税理士・司法書士等の他士業や不動産会社から、複雑な相続業務の依頼が多い。遺産分割調停・審判に加え、遺言書無効確認訴訟、遺産確認の訴え、財産使い込みの不当利得返還請求訴訟など、相続関連の特殊訴訟の対応件数も豊富。
相続開始直後や、事前の相続対策の相談も増えており、「できる限り揉めずに、早期に解決する」ことを信条とする。また、相続税に強い税理士、民事信託に強い司法書士、裁判所鑑定をこなす不動産鑑定士等の専門家とも連携し、弁護士の枠内だけにとどまらない解決策、予防策を提案できる。
クライアントからは「相談しやすい」「いい意味で、弁護士らしくない」とのコメントが多い。不動産・相続関連のトラブルについて、解決策を自分ごとのように提案できることが何よりの喜び。
現在は、弁護士法人化し、所属弁護士数が3名となり、事務所総数6名体制。不動産・建設・相続・事業承継と分野ごとに専門担当弁護士を育成し、より不動産・相続関連分野の特化型事務所へ。2020年4月の独立開業後、1年で法人化、2年で弁護士数3名へと、その成長速度から、関連士業へと向けた士業事務所経営セミナーなどの対応経験もあり。
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