(※写真はイメージです/PIXTA)

多くのアパート経営者が頭を悩ませる「家賃の不払い」。オーナーの多くは管理会社に一任しているものの、入居者が管理会社による再三の督促にも応じず、直接連絡もつかない場合、コンタクトをとるための手段としての「張り紙」は許されるのでしょうか? 自身も不動産投資家としての顔を持つ山村暢彦弁護士が解説します。

家賃不払いの際の張り紙の問題点とは?

いくら督促状を出しても、返答がない、家賃を支払わない。賃料不払いに悩まされるケースは多いでしょう。

 

近年は家賃保証会社の利用が進み、不払いの際には保証会社からの支給が期待できる場面も増えてきましたが、まだまだ古いアパートでは大家さん自身が家賃督促をしなければならないケースも多く、トラブルにつながるケースがあとを絶ちません。

 

そのようななか、近年は賃借人側の権利意識も非常に高まっていますから、不払いだからといって鍵を付け替えるのは言語道断です。自力救済禁止の原則というものがあり、不払いだからと勝手に「仕返し」をすれば、大家さんの側が「住居侵入罪」や「窃盗・横領罪」に問われかねません。

 

では、今回のテーマである「張り紙で賃料督促することはどのような法的問題があるか?」ということについてです。

 

まず、脅迫にあたるような、高圧的なことを書いてはいけないのは当然です。「賃料を払わないなら……するぞ!」のような文面です。いくらドアに貼っていて家のなかに入っていないとしても、このような脅迫文面にあたるようなものがあれば、大家さんのほうが警察に怒られます。

 

では次に、事務連絡的に「〇〇〇〇様、〇ヵ月分の賃料が未払いのため、支払ってください」と張り紙をしておくケースです。大家さん側としては、単なる連絡事項のように感じるかもしれません。

 

しかし、入居者の個人情報、氏名、年齢などを記載してしまうと、住居に貼ってあるものである以上、簡単に住所と結び付けられてしまうので、個人情報保護の観点、プライバシーの観点から問題がある行為といえるでしょう。

 

また、「賃料を払っていない」という内容自体が名誉棄損に該当すると判断した裁判例もあるので、事務連絡に感じる内容であっても、安易に他人が見られる状態でこのような張り紙を行うことは問題なのです。実際の裁判例をみてみましょう。

 

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本記事は『アパート経営オンライン』内記事を一部抜粋、再編集したものです。

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