多くのアパート経営者が頭を悩ませる「家賃の不払い」。オーナーの多くは管理会社に一任しているものの、入居者が管理会社による再三の督促にも応じず、直接連絡もつかない場合、コンタクトをとるための手段としての「張り紙」は許されるのでしょうか? 自身も不動産投資家としての顔を持つ山村暢彦弁護士が解説します。
現在の家賃督促の対応策
ご紹介した裁判例などをもとに、現在の家賃督促の対応策を整理します。
最初の1~2ヵ月は、一般的に、大家さんないし管理会社による連絡を試みるのがセオリーでしょう。書面、電話、訪問といった方法により、まずは賃借人との連絡、督促を試すべきです。
書面による通知については、配達証明付き郵便を利用するなど、「督促した」という履歴を残すべきです。やや手続きが煩雑ですが、できれば「配達証明付きの内容証明郵便」がベストではあります。
1ヵ月を経過してもまったく連絡がないとなれば、少しコストがかかりますが、弁護士名をいれて、弁護士に内容証明郵便を出してもらうのがよいと思います。一般的な相場としては5万円ほどの費用かと思います。
いままで無視していた賃借人でも、弁護士の名前を出して、裁判になると通知すれば、対応が変わることもあります。
これでもまったく動きがなければ、むしろ失踪や居室内の事故、死亡などを疑って、警察署に室内の確認とその動向を依頼するのがベターです。近年孤独死の問題もありますので、前よりも柔軟に対応してくれるのではないかと思います。
勝手に大家さんや管理会社だけで対応すると、自力救済の問題も出てきてしまうので、警察への相談が必須といえるでしょう。
法律も社会の変化とともに裁判例の結論も変わり得るものですので、大家さんも常に勉強しながら対応を間違えないようにアップデートしていく必要があるといえそうです。
山村 暢彦
山村法律事務所
代表弁護士
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実家の不動産・相続トラブルをきっかけに弁護士を志し、現在も不動産法務に注力する。日々業務に励む中で「法律トラブルは、悪くなっても気づかない」という想いが強くなり、昨今では、FMラジオ出演、セミナー講師等にも力を入れ、不動産・相続トラブルを減らすため、情報発信も積極的に行っている。
数年前より「不動産に強い」との評判から、「不動産相続」業務が急増している。税理士・司法書士等の他士業や不動産会社から、複雑な相続業務の依頼が多い。遺産分割調停・審判に加え、遺言書無効確認訴訟、遺産確認の訴え、財産使い込みの不当利得返還請求訴訟など、相続関連の特殊訴訟の対応件数も豊富。
相続開始直後や、事前の相続対策の相談も増えており、「できる限り揉めずに、早期に解決する」ことを信条とする。また、相続税に強い税理士、民事信託に強い司法書士、裁判所鑑定をこなす不動産鑑定士等の専門家とも連携し、弁護士の枠内だけにとどまらない解決策、予防策を提案できる。
クライアントからは「相談しやすい」「いい意味で、弁護士らしくない」とのコメントが多い。不動産・相続関連のトラブルについて、解決策を自分ごとのように提案できることが何よりの喜び。
現在は、弁護士法人化し、所属弁護士数が3名となり、事務所総数6名体制。不動産・建設・相続・事業承継と分野ごとに専門担当弁護士を育成し、より不動産・相続関連分野の特化型事務所へ。2020年4月の独立開業後、1年で法人化、2年で弁護士数3名へと、その成長速度から、関連士業へと向けた士業事務所経営セミナーなどの対応経験もあり。
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