(※写真はイメージです/PIXTA)

マシンの動かし方を知るのと、そのマシンが使える、あるいは使って筋肉に刺激を与えられるというのはまったく意味が違う。還暦から筋トレを始めた城アラキ氏が著書『負けない筋トレ 還暦から筋トレにハマったら、「肉体」と「人生」が激変した!』(ブックマン社)で解説します。

素人は自分の欲求が明確化できない

■パーソナルトレーナーは「筋肉のバーテンダー」だけど

 

ジムをバーにたとえるなら、パーソナルトレーナーはバーテンダーと同じだ。実は、客はバーテンダーに酒の知識など求めていない。酒の知識などあって当然だからだ。酒の知識自慢をしたいのは客の方で、プロがそんなことを自慢するのは己が二流と認めているようなものだ。

 

トレーナーさんならある程度の生理学、運動学、栄養学の知識はあって当然。しかも自分がそれなりの見栄えに体を鍛えてあるのも仕事のうち。それ自体はなんの利点にもならない。

 

昔、体だけは立派な若いトレーナー君が「どんな体になるのが理想ですか」と訊くから「へえ〜どんな体でも大丈夫なの? じゃぁシュワルツェネッガー。スタローンでもいいけど。大丈夫?」と、からかった。

 

ところが「もちろんです」とニコニコ笑って無邪気に答えてくれる。冗談がまったく通じていない。意地悪なオジサンは内心こう思ってしまった。

 

「トレーニングでどんなに鍛えても、体はともかく頭のなかは君のようにならないのが希望ね」

 

この客は本当は何を望んでいるのか、すべてのサービス業にとってそれを探り出すのがいちばんの仕事。素人は自分の欲求が明確化されないから素人なのだ。

 

どんな体と漠然と訊くのではなく、持久力をつけたいのか、筋肥大が希望なのか、それも細マッチョなのか太くてもいいのか、パワー系で重いバーベルを持ち上げてみたいのか。そもそも素人はそんなことすらわからないのが普通なのだ。素人でもわかるように質問の言葉を選ぶのもプロとしての仕事だ。誰の体を目指すのかと、幼稚園児の質問はやはり返答に困る。

 

この意味で、良いトレーナーに必要なのはコミュニケーション能力かもしれない。ただし、体育会系で育ってきた子が多いであろう日本のトレーナーさんに、このへんのセンスを求めるのは少々かわいそうではあるけど。

 

■いいサービス

 

サービスという点では、トレーナーという仕事も他のサービス業もあまり変わらない。結局は顧客満足度だ。しかし本当の意味での顧客満足はなかなか難しい。よく言うのだが、飲食店などで、その店になぜ足を運びたくなるのか。

 

素人である客が簡単に気づいてしまうような店は一流ではあっても超一流とはいえない。料理が美味い、酒の種類が豊富、店内のインテリアが素敵。そんなことを客が褒めているうちはダメなのだ。

 

本当にいい店とは、どこがいいのか客にさえ気づかせずに「何か心地よかった」という記憶だけを客に残し、何度もその「心地よさの理由を探しに」店に通って常連になるような店なのだ。この意味でも、いちばん大切なのは眼には見えぬ「店の空気」なのだ。ちょっと余分な話をしよう。

 

15年ほども前のことだ。都内の某有名グラン・メゾンでのこと。取材のために空港グランド勤務の若いお嬢さんたち3人ほどと食事をした。担当編集者含め5人のテーブルだ。コースが終わると、デザートワゴンが運ばれてくる。

 

「お好きなだけ召し上がって結構ですよ」とギャルソンに言われ、お嬢さんたちはキャーキャー喜んで延々と食べ続ける。コイツら本当に全部食い尽くす気かというくらいに食べる食べる。

 

と、ふと気づいてあたりを見回すと、20席近くあった他のテーブルの客は誰ひとりいなくなっていた。残っているのは我々のテーブルだけ。閉店時間も過ぎて、スタッフの店じまいの準備もあるだろうに、そんな気配は一切感じさせなかったのだ。だからこそこちらもついつい時間を忘れてしまった。これはなかなか凄いと感心した。

 

しかし、この店が改装され、しばらくぶりに行ってみたら、ギャルソンが同伴とわかる男女の写真を客のスマホで撮影していた。Vサインの女の子はキャーキャー騒いで落ち着かないし、隣のオヤジのニヤけ顔も気に入らぬ。他に客がいるんだからせめてストロボはやめなさいと、文句のひとつも言いたくなった。ま、いいサービスを持続するというのも、なかなか大変ネとため息をつくしかない。……と、少々話がそれ過ぎた。

 

城 アラキ
漫画原作家

 

 

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本連載は、城アラキ氏の著書『負けない筋トレ 還暦から筋トレにハマったら、「肉体」と「人生」が激変した!』(ブックマン社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

負けない筋トレ

負けない筋トレ

城 アラキ

ブックマン社

『ソムリエ』『バーテンダー』など、数々のお酒にまつわる傑作漫画の原作を手掛けてきた著者は自他ともに認める酒呑みであり、美食家だ。3日に一度は暴飲暴食。仕事柄、1日の歩数が500歩なんてザラだった。運動もしない日々を…

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