(写真はイメージです/PIXTA)

損害賠償請求などが認められた「パワハラ」を問題とする裁判事例はどのようなものがあるのでしょうか? 今回は職場いじめが認められ、慰謝料計1,357万円の請求を命じられた「パワハラ」裁判事例のほか、特性ごとに6つに分類した事例をAuthense法律事務所の西尾公伸弁護士が紹介します。

 

パワハラの裁判事例:人間関係からの切り離し型

隔離や仲間外し、無視なども、「人間関係からの切り離し型」としてパワハラの1類型とされています。以下の事例が、これに該当します。

 

上司と男女関係という噂が流れ…退職させるための嫌がらせと判断された事例

Xが上司Hの指示により根拠不明の出金等の調査を行ったところ、ほかの従業員数名が反発してXに非協力的態度をとるようになった事例です(※9)。

※9・参考 厚生労働省:【第38回】 「一連の行為が、労働者を孤立させ退職させるための"嫌がらせ"と判断され、代表取締役個人及び会社の責任が認められた事案」 ― 国際信販事件

 

具体的には、Xと上司Hが男女関係にあるとする噂が流布されたほか、経理担当をはずれ早朝から深夜におよび休憩も取れず、土日出勤もあった物産展業務に1人で従事することになり、人員補充を求めても対応されませんでした。

 

ほかにも、この従業員らは、Xに対し、利用可能な机が別にあるにも関わらず、ほかの従業員に背中を向けて座るうえ、後ろの机との間隔が35センチしかない資料置場として使用されていた席に移動させる、仕事が与えられなくなったうえ、休暇を申請したところ行先等を示すホワイトボードに「永久に欠勤」等と記載するなどの行為を行いました。

 

この事例において、裁判所は、一連の行為は労働者を退職させるための嫌がらせとして不法行為にあたると認定され、代表取締役2名につき個人として損害賠償責任を認め、会社と連帯して責任を負うとされました。

 

内部告発をきっかけに20年以上離れた個室に…職場いじめが認められた事例

会社の法令違反が疑われる行為をマスコミに対して告発した社員が、20数年以上ほかの社員とは離れた個室に席を配置されたうえ、研修生の送迎などの雑務しか与えられなくなった事例です(※10)。

※10・参考 厚生労働省:【第5回】「内部告発等を契機とした職場いじめと会社の法的責任」 ― トナミ運輸事件

 

この事例において、裁判所は、社員の内部告発は正当な行為であるから、会社が社員に雑務しか行わせず、昇格を呈して賃金格差を発生させたことは人事権の裁量の範囲を逸脱する違法なものであって、不法行為に基づく損害賠償責任、および信義則上の義務に違反したことを理由とする債務不履行に基づく損害賠償責任を負うとして、会社に対し、慰謝料200万円のほか、財産的損害約1,047万円と弁護士費用110万円……計1,357万円を社員に支払うよう命じています。

 

教諭の授業・担任等の仕事を外され、慰謝料の請求が認められた事例

高校教諭であるXが勤務先の高等学校から受けた授業や担任等の仕事を外され、職員室内での隔離、なんらの仕事が与えられないままの4年以上に渡る別室への隔離、5年以上に渡る自宅研修の命令などは人格権を侵害する不法行為に該当するとして、慰謝料を請求した事案です(※11)。

※11・参考 厚生労働省:【第64回】 「高等学校の教諭に対してなされた、授業・担任等の仕事外し、職員室内での隔離、別の部屋への隔離、自宅研修等の命令が、違法であるとして、600万円の損害賠償が認められた事案」 ―松蔭学園事件

 

この事例において、裁判所は、請求を認容し、勤務先である学校法人に対して600万円の損害賠償義務があるとされました。

 

次ページ「パワハラの裁判事例:個の侵害型」と「企業ができるパワハラ防止策」

本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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