(写真はイメージです/PIXTA)

損害賠償請求などが認められた「パワハラ」を問題とする裁判事例はどのようなものがあるのでしょうか? 今回は職場いじめが認められ、慰謝料計1,357万円の請求を命じられた「パワハラ」裁判事例のほか、特性ごとに6つに分類した事例をAuthense法律事務所の西尾公伸弁護士が紹介します。

 

パワハラの裁判事例:精神的な攻撃型

次に、脅迫や名誉棄損、侮辱、ひどい暴言などに代表される「精神的な攻撃型」に関する事例を3つ紹介します。

 

上司からのメールの内容が侮辱的言辞として、損害賠償請求が認められた事例

サービスセンターで勤務していたXの上司であるYが、Xに対し、「意欲がない、やる気がないなら、会社を辞めるべきだと思います」「あなたの給料で業務職が何人雇えると思いますか。あなたの仕事なら業務職でも数倍の実績を挙げますよ。」などと記載された電子メールを送付した事例です(※6)。

※6・参考 厚生労働省:【第56回】 「上司が送ったメールの内容が侮辱的言辞として、損害賠償請求が認められた事案」 ―A保険会社上司(損害賠償)事件

 

このメールはXのみならず、同僚宛にも送付されていました。Xは、このメール送信が不法行為にあたるとして損害賠償請求訴訟を提起しました。

 

この事例において、裁判所は、Yのメール送信が不法行為にあたると判断し、Yに対し、Xに5万円を支払うよう命じています。

 

上司の度重なる暴言により自殺におよんだと判断された事例

医薬品の製造販売などを行う企業で医療情報担当者として勤務していたAは、上司から「存在が目障りだ、居るだけでみんなが迷惑している。おまえのカミさんも気がしれん、お願いだから消えてくれ。」「車のガソリン代がもったいない。」「お前は会社を食いものにしている、給料泥棒」「肩にフケがベターと付いている。お前病気と違うか。」などと発言されたのち、身体の変調や営業上のトラブルも生じるようになり、自殺しました。

 

その後、Aの妻が労災保険給付を請求するも給付が認められなかったことから、不支給処分の取り消しを求めて訴訟を提起した事例です(※7)。

※7・参考 厚生労働省:【第54回】 「上司の言動により精神障害を発症し、自殺に及んだと判断された事案」 ―国・静岡労基署長(日研化学)事件

 

この事例において、裁判所は、Aの精神障害発症と自殺は業務に起因したものと判断し、労災保険の不支給処分を取り消しました。

 

退職勧奨や上司の暴言が不法行為にあたるとされた事例

航空会社の従業員が自主退職はしない旨を明言した後に、上司から長時間にわたる面談で「いつまでしがみつくつもりなのかなって」「辞めていただくのが筋です」「懲戒免職とかになったほうがいいんですか」などの表現を用いて退職を求められた事例です(※8)。

※8・参考 厚生労働省:【第12回】「退職勧奨が不法行為にあたると判断された事案」 ― 日本航空事件

 

ほかにも、「1年を過ぎて、OJTと同じようなレベルしか仕事ができない人が、もう会社はそこまでチャンス与えられないって言ってるの」「もう十分見極めたから」「懲戒になると、会社辞めさせられたことになるから、それをしたくないから言ってる」「この仕事には、もう無理です。記憶障害であるとか、若年性認知症みたいな」という上司の発言がありました。

 

この事例において、裁判所は、上記退職勧奨が不法行為に該当するとして、上司と使用者である会社に対し、20万円の損害賠償の支払いを命じました。

 

次ページパワハラの裁判事例:人間関係からの切り離し型

本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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