(写真はイメージです/PIXTA)

損害賠償請求などが認められた「パワハラ」を問題とする裁判事例はどのようなものがあるのでしょうか? 今回は職場いじめが認められ、慰謝料計1,357万円の請求を命じられた「パワハラ」裁判事例のほか、特性ごとに6つに分類した事例をAuthense法律事務所の西尾公伸弁護士が紹介します。

 

パワハラの裁判事例:過大な要求型

十分な指導を行わないままに過去に経験のない業務に就かせるなどの行為は、「過大な要求型」としてパワハラの一類型とされています。この類型の事例には、次のものが存在します。

 

教員の自殺は、過大な業務量の要求が原因として損害賠償を請求した事例

精神疾患による病気休暇明け直後である元教員に対して、校長らが従来の音楽科と家庭科に加えて教員免許外科目である国語科まで担当させ、そのほかの業務の軽減もはからなかった事例です(※12)。

※12・参考 厚生労働省:【第26回】「教員の精神疾患が増悪し自殺したのは、校長らのパワーハラスメントが原因であるとして損害賠償を請求した事件」 ― 損害賠償請求事件

 

その結果、元教員は精神疾患を悪化させ、自殺に至りました。校長らは元教員の業務量についてほかの教員と比較して過大でないなどと主張しました。

 

この事例において、裁判所は、医師の診断書に業務量の軽減が必要と記載されていたことなどから、通常の教員の場合と同視することは相当でなく、一連の行為と元教員の精神疾患憎悪及び自殺との間に相当因果関係があると判断されています。

パワハラの裁判事例:過小な要求型

相手を退職させるために誰でも遂行可能な業務を意に沿わずに行わせる行為などは、「過少な要求型」としてパワハラとなる可能性があります。この類型の具体的な事例は、次のとおりです。

 

管理職に対する肉体労働への配転命令を無効と判断された事例

退職勧奨に応じなかった管理職Xが配置転換先が決まるまでのあいだ、自宅待機をするよう命じられたあと、Y社筑波工場でのインク担当業務への配転および関連会社B奈良工場への「印刷関連」業務への配転を命じられた事例です(※13)。

※13・参考 厚生労働省:【第35回】 「退職勧奨に応じなかった、開発業務に従事していた管理職に対する肉体労働への配転命令が、権利の濫用として無効と判断され、元の部署に勤務する地位にあることが認められた事案」 ― フジシール(配転・降格)事件

 

Xは、いずれの配転命令も無効であるとして、慰謝料の支払いと降格処分の無効、賃金減額相当額の支払いを求めて提訴しました。

 

この事例では、配転先の業務内容や配転の経緯から、上記いずれの配転命令も権利濫用であり無効であると判断され、慰謝料については認められなかったものの、降格処分の無効とこの降格に伴う賃金減額相当額の支払いについては認容されています。

 

退職勧告に応じなかった課長の配置転換・降格を無効と判断された事例

退職勧告に応じなかった営業部の課長職であったXが、さほど業務量のない倉庫への配置転換と降格を命じられたうえ、賃金を減額された事例です(※14)。Xはこれに対し、配置転換命令の無効や慰謝料などを求めて提訴しました。

※14・参考 厚生労働省:【第31回】 「配置転換及び降格についてその無効とそれに伴い減額された賃金の支払いを求めた事案」 ― 新和産業事件

 

この事例では、配置転換と降格命令は、Xが退職勧奨を拒否したことへの嫌がらせが目的で行われたものであるため無効であり、かつこれらは不法行為にあたるとして、会社に対して配置転換・降格命令によって減額された賃金の差額と慰謝料50万円の支払いが命じられました。

 

本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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