(※画像はイメージです/PIXTA)

一時1990年以来の150円超えとなるなど歴史的な米ドル高・円安が展開するなか、日本の通貨当局は9月から10年以上ぶりに為替介入を行いました。この「円買い介入」について、日銀が金融緩和を続けるなかでは効果が薄いのではないかなどと否定的な見方も少なくありません。しかし、この介入が「副次的な成果」をもたらしていると、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏はいいます。詳しくみていきましょう。

資金枯渇の可能性はある?…「中曽根ボンド」の教訓

今回のような円安阻止の円買い介入局面で注目されるのは、外貨売り介入の原資となる外貨保有が有限のため、介入資金の枯渇などが懸念されるのではないかということ。しかし、介入体制の補強策がないわけではなさそうです[図表2参照]。

 

出所:マネックストレーダーFX
[図表2]米ドル/円の日足チャートと為替介入の観測(2022年9月~) 出所:マネックストレーダーFX

 

1973年の変動相場制度移行後、日本の通貨当局による外貨売り介入資金が枯渇したということはありませんでした。

 

ただ、外貨売り介入資金の強化策が検討されたことは少なくとも1度ありました。1980年代前半、外貨建て債券を発行することで外貨資金の調達を検討したケースです。この外貨建て債券は、当時の総理大臣の名前から通称「中曽根ボンド」と呼ばれました。

 

当時の米ドル高・円安の始まりも今回と似ており、米国が本格的なインフレに陥ったことをきっかけに大幅利上げを継続し、それに連れる形で米ドル高・円安が広がったという流れでした。

 

1980年までの民主党カーター政権は日米協調介入に出動するなど、行き過ぎた米ドル高・円安歯止めに協力的な態度をとりましたが、状況が変化したのは、1981年から共和党レーガン政権に交代したことが大きかったようです。

 

レーガン政権は、米ドル高放置の不介入政策をとり、これは、「ビナイン・ネグレクト(優雅なる黙認)」と呼ばれました。こうして米ドル高・円安は長期化し、日米の貿易不均衡は急拡大に向かったのでした。

 

当時日米政府間では、経済問題を協議する「日米円ドル委員会」という会合が開かれていました。その関係者の1人は、「米国側から対外不均衡拡大を止めるべく、日本政府に対して外貨建て債券発行を検討するよう要請があった」と述べています。

 

そういった経緯からその後立場が逆転し、1995年、止まらない米ドル安・円高が問題になった際には、日本政府から米政府へ非公式ながら米ドル安を止めるために外貨建て債券(当時の米大統領の名前からとった「クリントン・ボンド」)発行に伴う外貨資金の調達が要請されたこともあったようです。

 

とはいえ、日本の外貨売り介入の原資となる外貨準備は1兆米ドル以上あることから、外貨資金の枯渇懸念はまだまだ非現実的と考えられます。

 

ただ、今回の円安局面に限らず、将来的に円防衛策が現実味を増した場合、外貨売り介入強化策としてまず注目されるのは、外貨建て債券発行策でしょう。仮に岸田政権においてそれが検討されるなら、「岸田ボンド」発行ということになります。

 

 

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

■恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ

 

■入所一時金が1000万円を超える…「介護破産」の闇を知る

 

■47都道府県「NHK受信料不払いランキング」東京・大阪・沖縄がワーストを爆走

 

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録