ドル円163円目前で急反落…為替介入と投機筋の円売り調整で円高は進むのか【今週の米ドル/円予想レンジ「158~163円」の根拠】

7月7日~7月13日の「FX投資戦略」ポイント

ドル円163円目前で急反落…為替介入と投機筋の円売り調整で円高は進むのか【今週の米ドル/円予想レンジ「158~163円」の根拠】
(※画像はイメージです/PIXTA)

米ドル/円は一時163円目前まで上昇し、2024年7月に付けた高値を更新しました。しかし、その勢いは長く続かず、米雇用統計の発表を前に160円台まで反落しました。市場では、積み上がった投機筋の円売りポジションの調整に加え、日本当局による為替介入への警戒感が高まっています。160円を超える円安はどこまで許容されるのでしょうか。また、2024年夏のような急速な円高局面が再び訪れる可能性はあるのでしょうか。マネックス証券チーフFXコンサルタント・吉田恒氏が6月の相場展開を振り返るとともに、7月のドル/円相場を予想します。

7月7日~7月13日の「FX投資戦略」ポイント

<ポイント>

・先週の米ドル/円はついに2024年7月の高値も更新、一時163円に迫る。ただその後は160円台まで円高へ反転

・日本の通貨当局は、160円を大きく超える円安を許容せず円高への反転を目指す方針に変わりなさそう。一方で長期金利上昇再燃の円安への影響は懸念。

・今週の米ドル/円は158~163円で予想。

先週の振り返り=ついに2024年7月の円安値も更新!!

米雇用統計発表前から円高へ反転=ポジション調整の影響か

先週の米ドル/円は、2024年7月の高値もついに更新、一時162.8円まで一段高となりました(図表1参照)。ただ2日の米雇用統計発表前から下落に転換すると、一時は160円半ばまで反落する場面もありました。

 

出所:マネックストレーダーFX
[図表1]米ドル/円の日足チャート(2026年4月~) 出所:マネックストレーダーFX

 

このように米ドル/円が反落したのは、ポジション調整の影響が大きかったのではないでしょうか。CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは一時売り越し(米ドル買い越し)が15万枚まで拡大、2024年7月などに記録した過去最高の売り越しに迫る動きとなっていました(図表2参照)。別の言い方をすると、かなり米ドル買い・円売りの「行き過ぎ」懸念が強くなっていたわけです。

 

出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成
[図表2]CFTC統計の投機筋の円ポジション(2005年~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

 

こういったなかで、相場が大きく動きやすい米雇用統計発表を控え、日米当局などによる米ドル売り介入への警戒感が浮上、これを受けて「行き過ぎ」懸念のあった米ドル買い・円売りポジションを縮小する動きが拡大したことで米ドル/円が反落したということだったのではないでしょうか。

 

円安阻止方針は不変か=160円超の円安許容できず、円高へ反転目指す

日本の通貨当局は、ゴールデンウィーク中に160円程度から断続的に米ドル売り・円買い介入を11兆円程度も行いました。ただその後米ドル高・円安が改めて160円を大きく超え、さらに2024年7月に記録したここ数年の高値だった161.9円を更新しても介入を再開した形跡がなかったことから、円安阻止方針が変わったとの憶測も浮上していました。

 

ただ片山財務大臣などは、円安阻止姿勢に何ら変わりはないとの考えを繰り返しています。これをより具体的にすると、160円を大きく超える円安はもはや国内的に許容できるものではないことから、根強い円安マインドを払しょくするためにも150円程度まで円高へ反転させるタイミングを探っているといった意味と考えられます。

 

円高に転換しやすい7月=夏期休暇前の円売りポジション調整の影響!?

7月は2022~2024年と3年連続で米ドル安・円高となりましたが、それは夏期休暇が本格化する前に、過大な米ドル買い・円売りポジションを調整する影響が大きかったと考えられました(図表3参照)。

 

出所:マネックストレーダーFX
[図表3]米ドル/円の月足チャート(2022年~) 出所:マネックストレーダーFX

 

すでに見てきたように、投機筋の米ドル買い・円売りには「行き過ぎ」懸念が強くなっている可能性があります。その意味では、円安阻止姿勢の強さが確認されることで、短期的に165円を目指すようなさらなる円安見通しが消えるようなら、ポジション調整の円買い戻しにより米ドル安・円高へ大きく戻す可能性も出てくるのではないでしょうか。

 

「7月の円高への大反転」が起こった2024年=円売り取引の損失転換が影響

とりわけ印象的な「7月の円高への大反転」となったのは2024年でしょう。為替介入をきっかけに161円で円安が止まると、その後1ヶ月もしないうちに約20円もの円高に向かうところとなったのです。ここで鍵になったのは、円売りポジションの損益分岐点割れだった可能性がありました。

 

過大な円売りポジションが含み損に転落したことで、損失拡大を回避するために円買い戻しが急拡大し、急激な円高をもたらした可能性がありました。代表的な投機筋であるヘッジファンドの損益分岐点は米ドル/円の120日MA(移動平均線)が目安と見られています。それは足下で158円程度なので、この先米ドル/円がそんな120日MAも大きく割れそうになった場合は、円売りポジション処分に伴う円買いが一段と拡大し、円高への反転が広がる可能性もあるのではないでしょうか(図表4参照)。

 

出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成
[図表4]米ドル/円と120日MA(2022年~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

今週の注目点=日本の政治と「長期金利上昇=円安」の関係

長期金利上昇再燃の円安への影響も要注意

米ドル/円の行方を考える上で、もう1つ気になるのは日本の長期金利上昇です。米ドル高・円安は1年前くらいから日本の財政規律を懸念したこの長期金利上昇への連動を強めているようにも見えるので、長期金利上昇が止まらないなら果たして円安も止まるのかという考え方はあるでしょう(図表5参照)。

 

[図表5]米ドル/円と日10年債利回り(2025年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

 

ここに来て長期金利上昇が再燃したのは、政府が毎年決める経済財政運営と改革の基本方針である「骨太の方針」発表や高市総理の公約である消費税減税案に対して財政規律への懸念が改めて強まったためと見られています。

 

国内政治は、会期末の延長などを巡り与野党のみならず与党内でも対立があると見られ波乱含みの様相となってきました。そういった政治要因が、長期金利の動きを通じて米ドル/円にどう影響するかも要注意でしょう。

 

今週の米ドル/円は158~163円で予想

以上、日本の長期金利の動向は気になるものの、基本的に日本の当局による円安阻止方針は変わりないと見られることから、投機筋の円売りポジション調整が本格化した場合は、円高への動きが広がる可能性もあると考えています。そういったことを踏まえた上で、今週の米ドル/円は158~163円で予想します。

 

 

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

 

 

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