「偉い人」がインタビューをしてはいけない理由
■社長や役員に面接をしてもらう際の注意点
採用面接は、最終面接に近くなればなるほど、組織内の上位の意思決定者、つまり社長や役員など「偉い人」が面接担当者として現れます。
この「偉い人」は意外なことに、面接はそれほど上手くないケースがよく見受けられます。先ほど述べた敏腕創業社長もそうでした。これは一体なぜなのでしょうか。
結論から言ってしまうと、起業や出世した人は、成功体験などによる「持論」で物事を考えやすいからです。物事を判断する際に一から考えず、過去の経験や先入観から直感的に「この場合はこうすればいい」とパターンを決めてしまうのです。このような問題解決手法を「ヒューリスティック」といいます。
この手法を使えば、確かに手早く仕事をこなし、成果を上げることはできるでしょうが、採用面接においてヒューリスティックで人を判断するのは危険です。
なぜなら人にはたくさんの心理バイアスがあり、その評価がゆがむのは、得てして「何かを決め付けたとき」に起きてしまうからです。
本業なら有効だった「パターン化しての対応」を人の採用にも当てはめると、このバイアスの罠にはまってしまいます。
そのため、面接ではおおよその見当がついたとしても、相手の口でそのことをちゃんと言わせて確認しなければなりません。
では、どうすればよいか。私のおすすめは「インタビュアー」と「評価者」を分けることです。最終面接であっても「偉い人」による一対一ではなく、訓練されたインタビュアー(人事担当者など)を別に置き、中立的な立場から質問してもらいます。社長や役員らは質問せず、あくまで評価だけをしてもらうのです。
また、先ほどの敏腕社長の例と同様、「自社への惹き付け(動機付け)役」になってもらう方法もあります。実質的な最終面接は人事担当者などが対応し、会社としての合否はつけたうえで、内定を辞退されないように働きかけてもらうのです。
トップや幹部に上り詰めたような人は総じて会社への熱意も高いため、口説くのは最上級にうまい人が多いです。入社への動機付けに専念してもらうため、役割分担を検討しましょう。
会社の最終的な意思決定者である「偉い人」について面接での立ち居振る舞いを工夫すれば、その会社の面接精度を一気に高めることが期待できるでしょう。
ポイント
•採用面接では「持論」で人を判断しないようにする。
•「偉い人」が面接を担当するときには、別にインタビューする人を付け、なるべく評価だけをしてもらう。
•「偉い人」には、候補者への動機付けを行ってもらうことも有効。
曽和 利光
株式会社人材研究所 代表取締役社長