印象の「仮説」は面接で「実体化」する
体格のいい、いかにも体育会系の学生が元気よく「よろしくお願いします!」と大きい声で社内にやってきたら、「体力や根性がありそう」という印象を持ちませんか?
こうした印象を持つことは、実は生きていくうえで必要不可欠です。人は外部から日々受け取るさまざまな情報をイチから解釈していくと、脳が疲れてしまって本来使いたい時に本領を発揮できなくなるからです。
印象や先入観を持つことで、「これは以前にあったことと同じ。だからこうだ」と思考を省力化し、認識のゴールに早くたどり着けるようになり、ヒューリスティックと同じような恩恵を受けられるのです。
しかしこの先入観を素直に信じてはいけません。なぜなら、人間には先入観を否定する情報を無視する傾向もあるからです。それは「確証バイアス」であり、「見たいものしか見なくなる」のです。
一度「体力や根性がありそう」との判断が確証バイアスにかかると、その学生の努力が長続きしなかった経験を聞くと「そういう時もあるよね」と過小評価し、苦しいことを耐え抜いた経験は「やっぱりそうだ」と過大評価するようになります。このまま確証バイアスに従って評価を行うと、個人に対する適切な評価にならないため、採用した人材が入社後の順応に苦労したり、早く離職しやすくなったりします。
やっかいなことに、こうした印象の植え付けは短時間のうちに形成されます。それこそ面接前の受付や待合室の様子からでも何かしらのイメージが浮かぶでしょうが、それはあくまでも「仮説」であり、まだ「実体」ではありません。「タフだと思ったら繊細な心の持ち主」ということもあり得るのです。
だからこそ、面接ではこのすぐできあがる「仮説」を常に疑いつつ、候補者からさまざまなエピソードや意見、主張などを聞き、検証して実体化していくことが重要です。
とはいえ、受付や待合室、帰り際などの様子も含め、浮かび上がってくる候補者の印象を完全に排除することは、前述の「思考の省力化」から考えても現実的でありません。
感じた印象を素直に受け止めつつ、面接を通して得た事実や適性検査の結果など、全ての情報から人となりを判断することが重要です。
•人は思考を省力化するため先入観を持ちやすい。
•先入観はあくまで「仮説」であり、それらは選考の中で裏付けて「実体」にする。
•先入観に支配されないよう、全ての情報から人となりを推定する。