注意点②コレを書き忘れると「贈与税」が発生!?
換価分割を行うときは、贈与税に注意しなくてはいけません。
代表相続人1人の名義にして売却したあと、諸経費を差っ引いた金銭を残りの相続人に分配する際は、遺産分割協議書に、“遺産の不動産を売却換価するために便宜上、代表相続人の名義にする”という旨をきちんと記載しましょう。
さもないと、代表相続人の口座に振り込まれたお金をそれぞれの相続人に送金した際に「贈与」と見なされる可能性があります。
もしAさんが「この不動産を相続します」で終わらせているような遺産分割協議だと、単純にその不動産はAさんのものになっているわけです。すると売却して得たお金も当然Aさんの財産になりますから、Aさんのお金をほかの人にあげる行為は「贈与」となってしまいます。
ですから換価分割の際は、遺産分割協議書の中で「便宜上いったんAさんが相続するけれども、売却換価したあとに諸経費を差っ引いて、ほかの人に相続分としてこれだけの金銭を渡しますよ」という情報を盛り込んでおきます。そうすればほかの相続人に按分された金銭は相続の中で得たものだとわかり、贈与税の対象になりません。
この点をミスすると大変なことになりますので、かなり注意が必要です。
安全に分割したいのであれば、相続人が3人なら一度3人の名義を入れてから全員で売却するという単純な方法を取ればいいのですが、先程も述べたようにやはり手間がかかります。
上記で述べた内容を盛り込んだ遺産分割協議書を作っておけば贈与税がかかる心配はないわけですから、ラクに平等な遺産分割をするために、注意点①と併せて覚えておきましょう。
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<贈与税に注意>
代表相続人名義にして売却したあとに各相続人へ分配するには、遺産分割協議書に、「遺産である不動産を売却換価して分けるために便宜上、いったん代表相続人名義にした」と明確にわかるように記載しないと、贈与税が課税される可能性がある。
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注意点③売却にかかる「譲渡所得税」は誰が払うのか?
最後に、売却にかかる譲渡所得税について見ていきましょう。不動産取引に割と詳しい方から「代表相続人1人が売主として売却する場合、譲渡所得税は売主1人の負担になるのでは?」質問されることがあります。
譲渡所得税とは売却時にかかってくる税金です。たとえば3000万円で取得した不動産が4000万円で売れた場合、1000万円の譲渡益(取得額と売却額の差から得られる利益)が生じます。譲渡所得税はこの1000万円に課税されます。
あくまで売買契約書上の売主には代表相続人1人の名前しか載らないため、上記の質問のように、売主となった代表相続人だけが譲渡所得税を全額負担することになるのでは?と心配する方は多くいらっしゃいます。
もし代表相続人だけに税負担がかかるのであれば、譲渡益を3分の1ずつ分けたとしても、実際に税引きされたあと、売主を担った代表相続人1人だけ手残りが少なくなってしまいます。ほかの相続人のために色々と動いたのに、これではあまりにもかわいそうですよね。
結論としては、代表相続人1人が売主として売却した場合でも、共有名義にした場合でも税負担は変わりません。たとえばAさん、Bさん、Cさんの3人が共有名義にして売って譲渡益が出た場合、その譲渡所得税は3人が按分して負担します。代表相続人1人が売却した場合も同じです。遺産の取得実態から判断されますので、ご安心ください。
売買契約上の売主が1名だけであっても、換価分割のために便宜上1人の名義にしていても、その人だけが譲渡所得税を負担するわけではありません。売却後にほかの相続人に金銭をきちんと分割したのであれば、それぞれの取得割合に応じて譲渡所得税を負担することになります。
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<売却にかかる譲渡所得税>
Q. 売主は代表相続人1名になるので、代表者だけが譲渡所得税を負担することになるのではないか?
⇒A. 共有名義にした場合と換価分割した場合では、譲渡所得税は変わらない。遺産の取得実態で判断される
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以上、今回は「相続のプロが教える不動産の遺産分割テクニック」第1弾として「換価分割」を紹介しました。次回は第2弾として、税金に関わる遺産分割テクニックを見ていきましょう。
【動画/相続のプロが教える不動産の遺産分割テクニック①】
佐伯 知哉
司法書士法人さえき事務所 所長
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